
正しく怖がることの重要性を説く
「どうして蒸気で消毒できるのですか?」と熱心に質問するツヤ。今井との確執はなさそうだ。
一通り説明したうえで、今井は、そこまでは試験に出ないだろう、と言う。
だがツヤは「わからないことをなくしておきたくて」と真剣そのもの。
今井は「進めるところまでは進んでみるといい」と返したが、講義のあとで、生徒たちがまっすぐな目をしていると指摘し「あの目に応えるのは容易ではない」と語る。
その意欲の高さは良い。だが、わからないことがすべてわかるようになるときはたぶん一生来ない。というのは、『風、薫る』では、看護とは何か?という問いに簡単に答えられないことこそよしとされてきたからだ。その看護の真髄にツヤが到達することはいつの日であろうか。
次に現れたのはトメ(原島凛)だった。すっかり大人になって、もうなまっていない。結婚して、夫のやっている病院で看護婦として働いている。
労咳の講義をするトメ。労咳はおそろしいが、トメは怖がることは悪くないことだと説く。
「怖いから慎重になる」
「怖いから清潔に気を配る」
「正しく怖がることは自分自身を守り、患者を救うことにもつながります」
わからないこと、怖いこと。ネガティブなことにぶち当たると人は、それを無視したり否定したりする。でもそうではなく、わからないことや怖いことにまっすぐ向き合い、認識することで、理解や恐れを乗り越える方法を獲得することができるのだ。
「看護婦になりたい人がみんな命かけますなんて言ったら気持ちが悪いわ」
しのぶ(木越明)は言う。
適度に怖がって、病から距離をとることが肝要なのだ。
「自己犠牲の精神がなくても女が働ける職場の一つとして(看護の仕事が)広まらないと」と直美は考える。りんもトメもしのぶも同意している様子。
日本ではじめてトレインドナースになって、いまやすっかりベテランになった4人。彼女たちはへんに自己犠牲の精神論に陥らず、客観的で合理的で実務的に看護を考えている。このサバサバした感じがむしろプロフェッショナルという印象だ。
このドラマの脚本は、こういうところをさらりと描いているのがおもしろいところだと思う。







