このドラマって、もしかして…最終回直前に気づいた「作品の本質」〈風、薫る第124回〉『風、薫る』第124回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラに関する著書を2冊出版し、毎日レビューを続けて12年めの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は第124回(2026年9月17日放送)「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)

一足飛びの展開と「デ・ニーロ・アプローチ」

『風、薫る』第124回では、シマケン(佐野晶哉)の病気、直美(上坂樹里)たちの看護婦養成所立ち上げが描かれた。このレビューでは、佐野晶哉さんの身体的激変の驚きと、ドラマの「スイーツ要素」に対する考察をはじめ、モチーフとなった大関和、鈴木雅の史実との比較まで詳しく解説する。

 りん(見上愛)はシマケンの派出看護を受け持つことになった。

 おりしも胃がんの治療法が見つかったばかりの時代、シマケンは胃がんを患って手術し退院、自宅療養することになった。

 りんがシマケンと再会したとき、すでに彼は病に罹っていたということか。

 病気になって手術して退院までが一足飛びで驚いた。でもそれはあくまでもシマケンの物語であって、りんの物語として考えた場合、ある日突然、昔の恋人が病に罹っていたことを知って驚くというのはない話ではない。なんなら突然、訃報を聞くという体験はありえる。

 経過を飛ばしているが、佐野晶哉は痩せている。何キロ痩せて臨んだとネットニュースを賑わせていることだろう。

 文役の内田慈や『ばけばけ』の吉沢亮などに続く、デ・ニーロ・アプローチだ(役柄に合わせて体重を大幅に調整して臨むロバート・デ・ニーロに由来)。

「(シマケンは)手術で胃が小さくなったから、一度に食べられる量が減ってしまったんです」という、りん。

 すっかり弱々しくなっている。前からひょろっとやさしい感じだったが、それは心の話で、いまや体力的な問題。

 (手術は)自分ひとりだったら絶対にしなかったというシマケン。甥の文史朗(蒼井旬)が学校を出るまでは、と思って思い切ったようだ。なんたる責任感。早く直して仕事に復帰したいと自分を鼓舞している。

 この人にこんな忍耐力、持久力があったとは。甥を育てることに生きがいを見出したと言っていたが、小説にここまでの粘りを執筆で発揮することがなぜできなかったのか。それはそういう物語だからとしか言いようがないのだが……。