コンピュータなら、作業途中の状態をそっくりメモリに記憶できるので大丈夫なのですが、人間の作業記憶は非常に貧弱です。2桁同士の掛け算も紙に書かないとできないのが、その証拠です(注1)。
それでも、人間はほかの動物に比べればかなり優秀です。動物は割り込みが起きたら、そちらの作業にスイッチするだけで元の作業へは戻れません。人間は、ある程度時間を要するものの元の作業へ戻れるので、その分は優秀なんですね。
でも、そのわずかな優秀さに期待するのは間違いです。現代社会では、仕事をいくつもかけ持ちしてテキパキとこなすことが理想とされてきましたが、それは人間の能力を過信した理想です。
最近では、約束した時間に遅れることは大目に見られるようになりましたね。幸いなことに、情報技術が支えになってきています。メールやメッセージアプリのおかげで、急な割り込み作業を後回しにできたり、テレワークの普及で対面での待ち合わせといった約束も減ったりしました。
人間の本性が適切に理解できれば、人間に過大な負荷をかけないように先端技術を利用することができます。そうした配慮がきいた高度な文明社会になるのが理想ですね。私たち自身は大きくは変われません。今のままでいいのです。
上司への報告が遅れて
しまうのにも理由がある
職場では「ほうれんそうが大事」と、よく言われています。これは「報告・連絡・相談」の頭の音をつなげたスローガンですが、おろそかになりやすいからこそ、スローガンにして浸透させているのです。
この筆頭にある「上司への報告」が遅れがちなのは、そもそも報告したくないからです。
仕事がうまくいっていないときに、それを報告するとネガティブな状況になりがちです。たとえば、それを知った上司が落胆して小言を言ったり、困惑して同僚にしわ寄せがいったりします。それでも「早めに報告するほうがいい」と思う人がいる一方、一般的な人間の感情としては、ネガティブな状況が何度も起きるより、まとめて1回起きたほうがしのぎやすいのです。それに、発覚するまではダラダラできますよね。







