三宅香帆は自己啓発本を
「本が読めない元凶」とした

 しかし、数多いアンチ本の中でも、三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』が出た時の衝撃は大きかった。

 この本、タイトルが示す通り、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」という問いへの答えを探すという趣旨の本なのですが、では日本人が本を読めなくなった元凶は何なのか。その問いへの三宅さんの最終的な回答は、「それは……自己啓発本だ!」でした(やっぱり……)。

『自己啓発本を1000冊読んでわかったこと』書影『自己啓発本を1000冊読んでわかったこと』(尾崎俊介、集英社インターナショナル)

 三宅さんによれば、日本人はもともと生真面目で勤勉な民族。そこへもってきて明治維新以来、自己啓発本がアメリカから大量に流入するようになると、これがただでさえ働きすぎな日本人をさらなる重労働に駆り立てることになった。その悪習は今日まで続いていて、現代の日本人は自己啓発本のせいでまともな本を読む暇すらない。だから、自己啓発本の言うことなんて無視して、あくせく働くのはもうやめよう!ノンビリ過ごそう!そうして余った時間にまともな本を読もう!というのが、本書における三宅さんの主張ということになります。

 かくのごとく、日本では自己啓発本の愛好者が大勢おられる半面、アンチ自己啓発本を標榜する人も多く、声の大きさとしてはむしろ後者の方がよほど強いところがあります。そしてアンチ派の皆さんの多くが、自己啓発本を「燃え尽き症候群」をもたらすものとして、強く批判するというパターンが認められる。

 こんなに売れているのに、憎まれる――自己啓発本というのは、そういう宿命を背負った「鬼子扱いの文学ジャンル」なのです。