大谷翔平選手大谷翔平選手 Photo:SANKEI

「強く願えば夢はかなう」と聞くと、どこか非現実的に感じる。一方、「目標を決めて努力しよう」と言われれば、納得しやすい。自己啓発本では正反対に見えるこの2つの考え方だが、実は「意識が変われば行動が変わる」という共通点がある。大谷翔平や藤井聡太の例から、引き寄せ系と自助努力系の自己啓発本に共通する意外な考え方を読み解く。※本稿は、アメリカ文学者の尾崎俊介『自己啓発本を1000冊読んでわかったこと』(集英社インターナショナル)の一部を抜粋・編集したものです。

アメリカの自己啓発本は
2つの系統に分かれる

 アメリカの自己啓発本を眺めていると、ある奇妙な二分法に気づきます。一方には「行動せよ」「習慣を変えよ」「目標を設定せよ」と説く「自助努力系」の本があり、もう一方には「思考が現実をつくる」「イメージせよ」「引き寄せよ」と語る「引き寄せ系」の本がある。

 ぱっと見、この2つはまったく別物に見えます。前者はビジネス書の棚に置かれ、後者はスピリチュアルの棚に置かれる。片方は「努力と計画」を強調し、もう片方は「意識とイメージ」を強調する。読者の側も、どちらか一方に強く惹かれ、もう一方には距離を置くことが多い。

 自助努力系の自己啓発本は、とにかく「行動」を重視します。「行動を変えれば、人生が変わる」「習慣が人格をつくり、人格が運命をつくる」「目標を設定し、計画を立て、実行せよ」――こうしたメッセージは、アメリカの自己啓発本の王道中の王道です。

 この系統の本は、ビジネス書の棚にずらりと並びます。デール・カーネギーの『人を動かす』、ナポレオン・ヒルの『成功哲学』、スティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣』、ジェームズ・クリアーの『複利で伸びる1つの習慣』など、書名を挙げていけばキリがありませんが、どれも名著ばかり。そしてそれらに共通するのは、「行動を起こせば、目標は達成できる」という確信です。

 引き寄せ系自己啓発本のキモは、人間の思考の力を重視するところ。代表的なものとしてはチャールズ・F・ハアネルの『ザ・マスターキー』やジョセフ・マーフィーの『眠りながら成功する』、あるいはロンダ・バーンの『ザ・シークレット』などが挙げられます。これらの本はいずれも、「人間が強く願うことはすべて実現する」というメッセージを、様々なエピソードや成功談を通じて繰り返し語りかけてくる。

 しかし……。

 そうか!願うだけでいいのか!それは楽でいいな!……と思うのは私のような怠け者だけで、ごく普通の真面目な日本人は、引き寄せ系の自己啓発本を読むとこう言います。

・「願うだけで夢が実現するなんてインチキ」
・「スピリチュアルで怪しい」
・「科学的じゃない」

 実際、日本の書店においても、この種の本はビジネス書の棚ではなく、スピリチュアル本のコーナーに置かれることが多い。