企業研究を重ね、自己PRを何度も練習した。本番でも、用意した言葉をよどみなく言えた。それなのに面接官の反応は薄く、結果は不合格。就活でも転職でも、同じような経験をした人は少なくないはずだ。アパレル史上最年少で上場した株式会社yutori社長・片石貴展氏は、著書『自分の言葉で話せるようになりましょう。』で、完璧に準備した自己PRほど相手に届かない理由を明かしている。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局 淡路勇介)

面接
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実績を並べるほど、印象は薄くなる

「学生時代、世界一周してきました」
「学生のうちに起業しました」
「サークルのリーダーで、100人をまとめていました」。
面接でよく聞く自己PRだ。
話す側からすれば、ほかの候補者に負けない実績を選んだつもりだろう。
ところが片石氏は、世界一周や起業をしたからといって合格できるわけではないと言い切る。

なぜ、用意した自己PRは届かないのか。
面接官は、それが「借り物の言葉」だと見抜いているからです。

――『自分の言葉で話せるようになりましょう。』より

「前例のない取り組みに挑戦したい」「御社に貢献したい」。企業のウェブサイトや就活マニュアルから借りてきた言葉をつなぎ合わせた自己PRは、どれだけ流暢でも本人の身体を通っていない。だから、聞いた側には何も残らない。

面接を「審査」だと思うと、言葉が借り物になる

それでも、この種の自己PRをする人は後を絶たない。
片石氏は、その原因を面接のとらえ方に見ている。多くの人は面接を、審査員に選ばれるためのオーディションだと考えている。だから相手が求める人物像に合わせてエピソードをひねり出し、ほかの候補者に負けないよう話を盛る。
しかし本来、面接は雇う側と働く側がお互いを知るための場だ。

自己アピールするのではなく、コミュニケーションする意識で面接に挑むと驚くほどうまくいくことがあります。――同書より

記憶に残る人は、整っていない言葉で話す

では、面接官の記憶に残る人は何を話すのか。
片石氏が挙げる例は、次のような切り出しから始まる。

「正直、御社の理念とか、最初はよくわからなかったんです。でも説明会でOBの方の話を聞いた時に、自分が高校の時にだれもやらないと言われたことをひとりでやり続けて、ボコボコにされた経験と重なって。あ、自分がずっとやりたかったのはこういうことだったんだって、急に腑に落ちた感じがして」

言葉は整っていないし、流暢でもない。

けれど面接官はおそらく、「ボコボコにされた経験って何があったの?」と聞き返したくなる。
一方的な自己アピールが、会話に変わった瞬間だ。
この答えには、説明会で何かを感じた瞬間、それを自分の過去の経験とつなげた過程、そして最後にたどり着いた言葉の3つがそろっている。
この答えが記憶に残るのは、説明会で何に心が動いたのか、そしてそれがなぜ自分にとって大事なのかを、本人が自分の過去の経験から話しているからだ。
面接官が知りたいのは、何を成し遂げたかではない。何に心を動かされる人なのかだ。

結論だけ借りても、見抜かれる

注意したいのは、同じ結論でも途中を飛ばすと、とたんに借り物に戻ってしまうことだ。
「御社の理念を読んで、ずっとやりたかったのはこういうことだったと思いました」
言っている内容は先ほどの例とほぼ同じだ。しかし、何を感じ、何とつながったのかが抜け落ちているため、面接官には響かない。

人は、借り物の言葉を必ず見抜く。――同書より

緊張する場面ほど、完璧な答えを用意したくなる。けれど相手の記憶に残るのは、つっかえながらでも自分の身体を通ってきた言葉のほうだ。