本稿を読み終えると、なぜ頭を使えば使うほど動けなくなるのか、その構造がわかります。答えは少し目線を変えるだけで見えてきます。シンプルな原則です。情報の「量」よりも「種類」が、私たちを動かします。

スプレッドシートにまとめた
比較表に隠れた落とし穴

 Kさんは、転職サイトに登録し、スカウトメールを丁寧に読み、気になった企業を自分でも検索していました。企業名・年収・職種・在宅勤務の可否・社員数・口コミ評価をスプレッドシートに並べ、比べれば比べるほど決めやすくなると思っていました。

 でも気づいたら、比較表は50行を超えていました。

「A社は年収が高いけど、残業が多そう」「B社はワーク・ライフ・バランスがよさそうだけど、成長できるかが見えない」「C社は社風が好きだけど、給与水準が低い」

 どこかに○がつけば、同時に✕もつく。

 相談の最後に、私が「全部○の会社は、存在しますか?」と聞くと、Kさんはしばらく黙っていました。

 比較表に並んでいた情報を、もう少し見てみましょう。

 年収のデータは転職サイトから。口コミはSNSや掲示板から。残業時間はネットの体験談から。いずれも誰かが書いた文章であり、自分の目で確かめたものは、一つもありませんでした。

 私はこれを「無色情報」と呼んでいます。

 自分の体験ではない。自分の感覚でフィルタリングされていない。つまり1次情報ではない。誰かの解釈を経由して届いた、いわば色のついていない情報です。

 口コミで「社風がいい」と書いてあっても、「いい」の基準は人によってまったく違う。年収が高くても、自分がその仕事を好きになれるかどうかは、数字からはわかりません。

 無色情報は、増やすほど迷いが増えます。「情報が足りないから決められない」と思って集め続けるほど、選択肢が増え、比較項目が増え、○と×が入り乱れていく。終わりがないのです。

 では、何があれば動けるのか。

 自分が見て、聞いて、感じた情報です。私はこれを「有色情報」と呼んでいます。