50代でブラジリアン柔術を始め、「1年で一生分くらいの怪我をした」という本田直之さん。筋力も気力もある。それでも、若い頃と同じ戦い方は通用しなかった。体、住む場所、髪型、仕事との向き合い方まで変えてきた本田さんの話から見えてきたのは、人生後半に必要なのは「もっと頑張ること」ではない、ということでした。

50代になっても「若い頃と同じ頑張り方」をする人が、うまくいかなくなる理由Photo: Adobe Stock

「1年で一生分くらいの怪我をしたんですよ」

 そう話してくれたのは、50代になってからブラジリアン柔術を始めた本田直之さんです。

 怪我を繰り返し、ついには入院まで経験したそうです。

 私は『奇跡が起きる毎朝1分日記』の著者として、毎朝5時55分から、心と行動を整えるための「1分朝活」を無料で続けています。毎週月曜日にはゲストをお招きしているのですが、この日のゲストが、『セカンドハーフ戦略 人生後半戦、何を捨て、何を始めるか』(KADOKAWA)の著者、本田直之さんでした。

 本田さんには、もちろんまだ体力があります。筋力もある。パワーもある。「負けたくない」という気持ちもある。

 ところが、俊敏性や柔軟性、関節や腱の状態まで若い頃と同じではありません。

 それなのに、無意識のうちに「昔の自分」と同じ戦い方をしていた。

 そこで本田さんは気づいたといいます。

「戦い方を変えないといけない時期に来たんだな」

 これは柔術だけの話ではありません。

 若い頃、誰よりも働いた。人よりたくさん動いた。多少無理をしてでも結果を出した。

 そうして成功してきた人ほど、40代、50代になっても、同じ方法で乗り切ろうとします。

 しかし本田さんが考えたのは、まさにその「成功した戦い方」をどう更新するかでした。

 人生後半に必要なのは、昔の自分に戻ることではありません。

 今の自分に合った戦略へ変えることなのです。

年齢を重ねたら、あえて「何も知らない人」になる

 本田さんの話で、もう一つ印象に残った言葉があります。

「初心者であれ」

 年齢を重ね、仕事でもある程度の立場になると、初心者になる機会が急激に減っていきます。

 周囲も気を使ってくれる。

 多少おかしなことを言っても、若い頃のようには指摘されない。

 そして自分自身も、

「今さら恥をかきたくない」

「できない姿を見せたくない」

 と、知らない世界から離れていきます。

 本田さんは、だからこそ、意識して自分が何も知らない場所へ入るそうです。

 その一つが、鮨の学校でした。

 料理経験がほとんどない状態から鮨を学び、やがてポップアップで人に振る舞うようになった。

 学生時代から続けてきた長髪も、

「鮨を握るには合わない」

 と、バッサリ切りました。美容院まで変えたそうです。

 それまでの本田さんは、鮨を「食べさせてもらう側」でした。

 それが、自分で握るようになったことで、「食べさせる側」になった。

 同じ鮨でも、立つ場所が変われば、見える世界はまったく違います。

 初心者になるとは、「できない自分」に戻ることではありません。

 知らなかった世界を、もう一度増やすことなのだと思います。

人生後半で捨てたいのは「昔の自分ならできた」

 本田さんは、暮らす場所も変えました。

 東京とハワイの二拠点生活から、福岡とハワイへ。

 コロナ禍では体重が16キロ増えましたが、単に、

「ダイエットしなければ」

 とは考えなかったそうです。

「体のOSを入れ替える」

 と考え、16時間のファスティングを取り入れ、「とりあえずビール」もやめる。生活そのものを変え、5ヵ月で13キロ落としました。

 体を変える。

 住む場所を変える。

 髪型を変える。

 初心者になる。

 食べさせてもらう側から、食べさせる側になる。

 一見、バラバラに見えるこれらの行動には、共通点があります。

 過去の自分にしがみついていないことです。

 年齢を重ねると、

「若い頃ならもっとできた」

「あの頃はこれくらい平気だった」

 という言葉が増えていきます。

 でも、本当に見るべきなのは「昔の自分」ではなく、「今の自分」です。

 昔の成功体験が、今の自分に合わなくなったのであれば、変えればいい。

 それは衰えを認めることではありません。

 むしろ、新しい自分に合わせて、人生を設計し直すことです。

 人生後半は、若い頃の自分を必死に延長する時間ではない。

 これまで身につけたものを持ちながら、必要なら戦い方そのものを変えていく。

 ブラジリアン柔術で怪我を重ねた本田さんの話を聞きながら、私自身も、

「まだ昔と同じ戦い方をしているものはないだろうか」

 と考えさせられました。