定年退職を控え、会社の中での発言権を失い、誰からも頼りにされず「居場所のない状態」に追いやられる50代ベテラン。その原因は、現役時代に全員から好かれようとする「八方美人」なマネジメントを行い、ルールを変革する決断から逃げてきたことにあります。組織における「決断」と「排他性」の構造を理解していなければ、最後には誰からも信頼されなくなります。この記事では、書籍『リーダーの仮面』をベースに、全ビジネスパーソンに必須の「リーダーシップ」のあり方について指南する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

定年直前に「自分の居場所」を失う人が、現役時代にサボっていたことPhoto: Adobe Stock

「全員の納得」を得ようとする上司

 50代で居場所を失う管理職が、現役時代に犯していた最大の過ちがあります。

 それは、新しいルールや仕組みを導入する際、「全員の納得」を得ようと八方美人に立ち回ったことです。

「既得権益を持つベテラン層にも配慮しよう」
「成長したくない社員の意見も聞いてあげよう」

 全員に好かれたい一心で、誰の感情も害さないぬるま湯の調整に終始しました。

 しかし、政治と同じで、100%全員が満足する改革など存在しません。

 成長を諦めた層の顔色を伺い、ルールを曖昧にした結果、チームは停滞し、意欲ある若手社員は絶望して去っていきました。

全員の納得を得ようとする「八方美人」なマネジメントは、ルールを曖昧にし、組織を停滞させます。
新しい仕組みを導入する際、必ず反発は起こります。
「成長したい人のために決断する」という軸を貫き、不適切な反発には毅然と向き合う覚悟を持たなかった人は、最後には誰からも信頼されない居場所のない存在になります。
――『とにかく仕組み化』より

「バスを降りてもらう」覚悟

 名著『ビジョナリーカンパニー』には、「誰をバスに乗せるか、そして不適切な人にはバスを降りてもらうか」という教えがあります。

 組織が進むべき目的地(成長)が決まったら、全員を無理に乗せ続けることはできません。

 ルールに従わず、成長を拒む人には、バスを降りてもらう判断も時には必要になります。

 居場所を失った50代上司は、この「嫌われる決断」をサボってきました。

 不適切な人にまで配慮してチームをうやむやにした結果、組織を衰退させた戦犯として、経営陣からも若手からも見放されたのです。

「線引き」をする決断

 定年前でも揺るぎない居場所と尊厳を保ち続けるリーダーとは、「成長したい人のために決断できる人」です。

「本気で成果を出したい社員が、公平に報われるルール」を引くこと。

 反対意見や既得権益からの反発を恐れず、主語を「私」にして改革を断行します。

 リーダーの仮面をかぶり、全員に好かれる甘えを捨てること。

 組織の未来のために正しく「線引き」をして戦い抜いた人だけが、退職直前まで周囲から感謝され、確固たる居場所を持ち続けることができるのです。