日本は、1990年代のバブル崩壊以降、約30年にもわたってほとんど経済成長ができないという、世界的にもまれに見る「大失敗」を経験しました。この経済停滞の元凶を示す、日本経済の“異常値”とは何か? 高市政権の経済ブレーンである会田卓司氏と松本賢氏は、それは「財政の赤字」ではなく「企業の黒字」であると指摘します。その真意について詳しく解説していただきました(この記事は『何が日本経済を壊したのか』から抜粋・編集して作成しました)。

日本経済の“最大の問題”は、「財政の赤字」ではなく「企業の黒字」であるPhoto: Adobe Stock

少子高齢化は「失われた30年」の“真犯人”なのか?

 1990年代に深刻な経済低迷に陥ってから、約30年にもわたって日本経済は惨憺たる状態でした。

 第二次世界大戦後、世界でこんなにも長く経済停滞とデフレを経験した国はなく、かつては世界第2位を誇った名目GDPは延々と横ばいを続け、中国、ドイツに抜かれ世界第4位に後退。一人当たりGDPに至っては第36~38位にまで下がってしまいました。

 この間、度重なる消費税増税や社会保険料の増額など、日本人の国民負担率は45%を超える水準まで高まった一方、日本国民の賃金はなかなか増えず、中間層の家計貯蓄率は低下を続けてきました。日本の中間層は衰退の一途を辿ってきたと言っていいでしょう。まさに、日本経済は壊れてしまったのです。

 では、この「失われた30年」の原因はいったい何なのか?
 テレビや新聞で経済低迷の原因として、最も多く指摘されてきたのが「少子高齢化」と「人口減少」です。たしかに、人口が減れば消費量は減るでしょうし、少子高齢化で労働人口が減ることも経済にマイナスの影響を与えるはずです。

 だから、「少子高齢化や人口減少が進む日本では、もはや経済成長は望めない」といった宿命論に、説得力を感じる人がいるのもよく理解できます。しかし、実は、少子高齢化や人口減少だけでは、日本経済の低迷を十分に説明することはできないのです。

 難しい経済論を持ち出すまでもありません。なぜなら、そもそも人口減少や少子高齢化などの人口動態の悪化に悩んでいるのは日本だけではないからです。むしろ、【図-1】を見ればわかるように、日本よりも人口減少が進んでいるけれど、経済成長している国はたくさんあるのです。

「人口減少率」と「GDP伸び率」のグラフ

 この事実を踏まえれば、「少子高齢化や人口減少が進む日本では、もはや経済成長は望めない」といった宿命論を真に受けることはできないはずです。

 しかも、もうひとつ決定的な証拠があります。【図-2】を見てください。これは1994年以降の日本の名目GDPの推移を示したグラフですが、2008年から数年間は主にリーマンショックの影響、2020年は主にコロナ禍の影響で落ち込んでいるのも含めると、2022年くらいまではだいたい525兆円前後で横ばいを続けてきたことがわかります。

 ところが、コロナ禍がおさまり始めた2022年頃から、名目GDPが突如として膨らみ始めて、わずか2年で600兆円を超えたのです。日本の人口のピークは2008年で、その後は減り続けてきたのに、一気に経済成長をしてしまったのです。

日本の名目GDPの推移を示すグラフ

「人口動態の悪化が経済低迷の原因」だとしたら、このような現象は起きるはずがありません。つまり、「失われた30年」の“真犯人”は別にいることになるのです。

政府債務が増えるのは「普通」のことである

 この問題を別の角度から考えてみましょう。
 病気にかかった人を検査すると、身体のどこかに「異常値」が見つかるはずですが、それと同じで、日本経済には明らかな「異常値」があります。それはなんだと思いますか?