ノーベル賞の登竜門・ラスカー賞受賞で話題! 睡眠学の世界的権威・柳沢正史教授が、最新研究をもとにやさしく解説した著書『世界最高の睡眠学が教える 睡眠の正解』が話題です。巷にあふれる睡眠の常識・思い込みの真偽を解き明かしつつ、「眠れない」「起きられない」「寝ても疲れがとれない」といった悩みの解消法を提唱します。あなたが本来の自分を取り戻し、よりよい明日を迎える睡眠のヒントをお届けします。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・中村直子)
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「寝酒でよく眠れる」は勘違い
眠れない夜に、少しだけお酒の力を借りる。そんな寝酒を習慣にしている人は少なくないでしょう。寝る前にビールを1缶開ける。ワインやウイスキーを少し口にする。すると体がふわっとゆるみ、まぶたが重くなる。
「やっぱり、お酒を飲むと眠れる」
……そう感じるのも無理はありません。
アルコールには、脳の働きを鈍らせて眠気を誘う作用があります。だから寝つきがよくなるのは事実です。ですが、“寝つきがよくなること”と“よく眠れること”は、まったく別の話なのです。
寝酒は、眠りの入口だけは少し楽にしてくれます。でも、その先を壊します。つまり、寝酒は最悪。質のよい睡眠をとりたいなら、最初に避けるべきNG行為の1つです。
交感神経を刺激し、休むべき体が興奮しつづける
気持ちよく、ぐっすり眠れているように見えても、実際には眠りの質は落ちています。深い眠りは減り、睡眠のリズムそのものも乱れやすくなります。
寝入ったあと、体の中ではアルコールの分解が進みます。このとき生まれるのが、“アセトアルデヒド”という毒性の強い物質です。そして、このアセトアルデヒドが交感神経を刺激します。
交感神経は、体を活動モードに切り替える神経です。これが働くとアドレナリンやノルアドレナリンが放出され、心拍数が上がり、体は興奮した状態になります。
眠っているあいだは、本来、体を休ませる副交感神経が主役になるはずの時間です。ところが寝酒の夜は、その裏側で、アセトアルデヒドが交感神経を刺激しつづける。休むべき体が、逆に駆り立てられてしまうのです。
とくに眠りは後半にかけて崩れていきます。夜中に何度も目が覚める、眠りが浅くなる、明け方に早く目が覚めてしまう……。
追い打ちをかけるように、アルコールには利尿作用があります。夜中にトイレで起きやすくなる。脱水もしやすい。加えて、アルコールは舌やのどの筋肉をゆるませるため、気道がふさがりやすくなります。いびきが悪化し、睡眠時無呼吸を引き起こしたり、もともとある無呼吸を悪化させたりすることもあります。
ふだんはいびきをかかない人が、お酒を飲んだ夜だけ大きないびきをかいている。「今日は疲れているんだな」と微笑ましく見守る人もいるかもしれませんが、あれはアルコールのせいで気道が狭くなり、呼吸が乱れている可能性が大いにあるのです。
やっかいなのは、本人がいちばん気づきにくいことです。寝つきがよくなるので、どうしても「酒のおかげで眠れた」と感じてしまう。でも実際には、眠ったのではなく、アルコールで寝落ちしているだけ。その代償として、睡眠の質が犠牲になっているのです。
寝つきが少し楽になる。そのたった1つの“ごほうび”があるせいで、眠りが壊れている事実に、なかなか気づけない。寝酒が怖いのは、そこです。絶対にやめてください。








