「失敗してもいいから、まずやってみよう」。そう言われても、なかなか動き出せない。必要なのは勇気なのでしょうか。『おい、とりあえず終わらせろ』の著者、nwiizo(ぬうぃぞう)氏は、失敗したときに「戻せる構造」があるかどうかに目を向けます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
一度の失敗で全部やり直し
失敗は怖くない、失敗しても大丈夫、とはよく言われます。
ただ、なかなかそれを信じられないこともあるでしょう。
それは、言葉で「失敗OK」と言いながら、仕組みが「失敗したら全部やり直し」を強いているからです。精神論と構造が矛盾しているのです。
私がコードの作り直しを3週間先延ばしにした理由のひとつが、これでした。
対象のモジュールは動作確認が不十分で、触ったら何が壊れるかわからなかった。実際に壊れたら本番障害になる構造で、慎重になるのはある意味合理的だったのです。
つまり、手が動かないのは、単に失敗を恐れているからとは限りません。
失敗したときの影響が大きく、元に戻す方法も見えていない。
その状態で「まずやってみよう」と言われても、踏み出しにくいのです。
勇気を出す前に、「戻せる構造」を作る
転機は、作業用のコピーを作って、動作確認を先に書いたことでした。
それなら、壊れたら元に戻せばいい。本番には影響しない。
この「戻せる構造」を先に作った瞬間、着手の恐怖が消えました。
「失敗してもいい」は精神論ではない。失敗しても致命傷にならない構造を先に作ることだ。
仕事を小さく分けるときも、「作業量が少ないか」だけでなく、「失敗したときに戻せるか」を確かめる。
試す範囲と影響を受ける範囲を分けられれば、小さく始めることに現実味が生まれます。
「最悪のシナリオ」を3つ書き出す
もうひとつ有効なのは、始める前に頭の中で失敗をシミュレーションしておくこと。
私は、コードの作り直しに着手する前に、ノートに「最悪のシナリオ」を3つ書き出すようにしています。「動作確認が通らない」「依存関係が想定より深い」「レビューで設計方針ごとひっくり返される」。
書き出してみると、最悪のシナリオはだいたい対処可能なんですよね。
確認が通らないなら元に戻す。依存が深いなら範囲を狭める。設計がひっくり返されるなら、それは早くわかった方がいい。
「失敗したらどうしよう」と考えるだけでは、不安の輪郭は曖昧なままです。
何が起きそうかを書き出し、それぞれに対処方法を考える。そうすると、準備すべきことも見えてきます。
失敗を想像すると、失敗が怖くなくなります。想像できる失敗はもう「未知」じゃない。
怖いのは失敗そのものではなく、何が起きるかわからないことです。
本書の内容
まえがき 完璧を目指して、今日も終わらなかった
「もう少し良くしてから」の罠
「60点で出す」という革命
私たちには「終わらせる技術」が必要だ
第1章 おい、部屋を掃除しろ ―― 「完了」の正体を知る
「擬似完了感」のループに陥ってはいけない
「部屋の掃除」は終わらせるための小さな練習 ―― 小さな完了は複利のように効く
「わかってから出す」は動かない言い訳
あなたの「まだ60点」は、相手の「もう十分」かもしれない
「真面目な完璧主義」は「怠惰な先延ばし癖」と同じ
「良い」の基準を自分の中だけにとどめるな
先延ばしは「明日の自分への丸投げ」で進行する
「今日こそ頑張ろう」を繰り返さないための5ステップ
第2章 おい、やることを絞れ ―― ステップ1「決めろ」
何も聞かないまま2週間過ごすな
スコープを絞れ
「良い感じ」は測れないから終了条件を言語化する
ゴールは近い未来に置く
60点とは妥協ではなく「何を捨てるかを選ぶ」こと ―― 優秀なエンジニアも「諦めること」を決めて動く
早く聞く人が一番偉い ―― 「この方向で合ってますか?」を最初の30分で聞く
「山の間で立ちすくむロバ」になるな ―― 「十分良い」を選ぶ
小さな決定を頭の外に出す
第3章 おい、完了を祝え ―― ステップ2「分けろ」
やるべきなのに手が動かないのは、タスクがでかすぎるから ―― 「根性」より「構造」を疑え
「ただ手を動かせば終わる作業」に悩まないために ―― 「わからなさ」には5つの層がある
「全部わからない」は、書き出す前の幻想
完了を祝え
自分の「動ける粒度」を知る
動いたから見えた問題は前進の証拠
第4章 おい、手を動かせ ―― ステップ3「始めろ」
完璧な準備は、永遠に来ない ―― 方向だけ確認してから走れ
やる気を待つな ―― でも、体調は本当に大事だ
「本来の自分」という幻想を捨てる ―― 言語化も60点でいい
無駄かどうかの「判断そのもの」を消す環境設計
「美しい暮らし」の話にしないこと
「馬鹿げた小ささ」が効く ―― 「毎日30分」が失敗を作る
完璧主義者こそ、AIに叩き台を作らせろ
思わず始めてしまう「トリガー」を設定せよ
「失敗しても致命傷にならない構造」を先に作る
通知を切れ、視野を狭めろ ―― 「どうせ何をやっても変わらない」という冷笑は完璧主義の変形
第5章 おい、60点で出せ ―― ステップ4「出せ」
成果物と人間の価値は別物 ―― 「もし後輩がこれを出してきたら?」と想像する
シンプルなものをシンプルなまま出せ ―― 「早く終わってしまった気まずさ」を超える
早めのフィードバックは自分の死角に気づかせてくれる ―― アウトプットの質を落とす記憶の書き換えに抗う
「評価されたい」と「60点で出す」は両立する
助けが必要な状態を、ひとりで抱え込まない ―― 「60点で出す」のを許されるための関係性の作り方
「後戻りできないポイント」を外さない ―― 完了が先、改善は後
第6章 おい、いいからやり直せ ―― ステップ5「回せ」
「未来に向けたアドバイス」を受け取れ ―― 相手を評価者モードから助言者モードに変える問い
場当たり的な改善は「言葉の裏」を読むことで防げる
フィードバックの価値は受け手の準備で半分決まる ―― 解決法ではなく問題を言語化する
1回のフィードバックから10回使える原則を抜き出せ ―― 「自分は成長している」という感覚に騙されない
優れたチームは「誰が悪かったか」を問わない ―― 感情の処理と構造の理解を分ける
100回夢見るより60点で3回出せ
小さな成功が「地味な確信」を育てる ―― 「高揚感のある自信」より「地味な確信」
失敗など構わない ―― 仮説があれば
あとがき ―― あなたが終わらせたものを、誰かが待っている
私のおすすめの本を紹介します ―― とりあえず終わらせるために効く本たち