ノーベル賞の登竜門・ラスカー賞受賞で話題! 睡眠学の世界的権威・柳沢正史教授が、最新研究をもとにやさしく解説した著書『世界最高の睡眠学が教える 睡眠の正解』が話題です。巷にあふれる睡眠の常識・思い込みの真偽を解き明かしつつ、「眠れない」「起きられない」「寝ても疲れがとれない」といった悩みの解消法を提唱します。あなたが本来の自分を取り戻し、よりよい明日を迎える睡眠のヒントをお届けします。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・中村直子)
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ショートスリーパーを目指してはいけない
世の中には「ショートスリーパーになりたい」という人が多くいます。そのニーズに応えるように、短時間睡眠のテクニックや訓練法を紹介するコンテンツもあふれています。
しかし、睡眠時間を意図的に削ることは絶対にやめてください。
万が一、私の家族がショートスリーパーを本気で目指そうとしていたら、私は全力で止めます。それくらい、人体にとって悪影響しかありません。ここは睡眠学者として、あえて強い言葉で警鐘を鳴らします。
そもそもショートスリーパーは、目指してなれるものではありません。訓練で身につくものでもなければ、気合いや根性で獲得できる能力でもありません。仮に、そうした方法で「短時間でも平気」な状態になれたとしたら、それは睡眠不足に慣れてしまっただけです。本人は平気なつもりでも、脳と体はダメージを受けつづけています。
ひとりひとりに必要な睡眠時間の長さは、その人が持つ個性です。わかりやすくいえば、身長と同じだと考えてください。背が高い人もいれば低い人もいるように、そこには生まれつきの遺伝的な特性があります。専門的には、ある特徴がどれだけ遺伝によって決まるかという度合いを“ヘリタビリティ(遺伝率)”といいます。
身長はある程度は遺伝で決まると誰もが思っていますが、じつは、身長の遺伝率よりも睡眠時間の遺伝性のほうが高いことがわかっています。つまり必要な睡眠時間の長さは、本人の努力や環境で変えられるものではないのです。
身長160cmの人が、努力や根性で180cmになれないのと同じように、本来8時間の睡眠が必要な人は、訓練によって5時間ですむようにはなりません。ショートスリーパーは、努力で“なる”ものではなく、あくまでも稀な遺伝的特性を持って“生まれた”人に限られるのです。
ロングスリーパーを恥じる必要もない
同様に、ロングスリーパーの方も存在します。毎晩9時間、10時間眠らないと調子が出ない。それもまた身長の高さと同じように、生まれつきの体質であり個性です。
決して「怠け者だ」とか「意志が弱い」といった精神論の話ではありません。ショートスリーパーをうらやむ必要がないのと同じように、ロングスリーパーであることを恥じる必要もまったくないのです。
背の高い人が、低い天井に頭をぶつけないよう気をつけるのと同じように、人より睡眠が必要な人は、自分の生活スタイルをそれに合わせて調整していく。そうやって自分の体と上手に付き合っていくしかありません。
「あの人は短い睡眠時間でがんばっているから、自分もそうしなきゃ」「ショートスリーパーだという◯◯さんみたいになりたい」と、他人のペースに無理やり自分の体を合わせないことです。何より重要なのは、他人と比べるのはやめて、ご自身の体にとって本当に必要な睡眠時間をきちんと確保することなのです。
よく「人生の3分の1は睡眠時間だ」といわれます。そのため、「それほど長い時間を睡眠に取られるなんて損だ」と感じる人は多いと思います。
でもあせる必要はありません。どうか安心してください。本当に必要な睡眠をしっかりとり、脳と体が万全の状態になれば、起きているあいだに、いまよりも圧倒的に高いパフォーマンスを発揮できます。結果として、無理に起きて活動時間をひねりだすよりも、しっかり眠ったほうがはるかに生産的で有意義な毎日を送れるようになる。睡眠においても、まさに「急がば回れ」なのです。








