京セラ創業者の稲盛和夫氏 Photo:JIJI
数字に強く、判断が速く、説明もうまい――そんな人ほど、管理職候補として評価されやすい。だが、個人として優秀な人をそのまま人の上に立たせていいのか。京セラ創業者の稲盛和夫氏の講演と近年の組織心理学研究から、昇進前に必ず見ておきたいポイントを明らかにする。(イトモス研究所所長 小倉健一)
集団をまとめ上げる
リーダーの条件
数字に強く、判断が速く、説明もうまい。管理職の候補を選ぶなら、そうした能力を確かめたくなる。難しい仕事を任せる以上、能力を重視するのは自然だ。稲盛和夫も、頭がよく弁が立つ人材は、その力を生かして組織に貢献すると認めている。
その人を集団の先頭に立たせると、仕事はどう変わるのか。稲盛の講演を読んでいて興味深いのは、リーダーに求めるものを説明するために、西部開拓時代の幌馬車隊を持ち出したことだ。会社の組織図を離れ、まず長い旅を思い浮かべてみる。
稲盛が思い描いた隊列には、豊かになろうと西部を目指す荒くれ者も、女性や幼い子どももいた。隊長には、食料や水の分配、争いの仲裁、病人やけが人への対応まで求められた。目的地まで、この人たちを連れていかなければならない。
この例えで注目したいのは、稲盛が道案内の技術だけを語っていないことだ。水を手に入れた後には、それをどう分けるかという仕事がある。争いを裁くときには、それぞれに自分の言い分がある。隊長は、立場の違う人々の暮らしを預かり、その利害を調整する役目を負っている。
会社に引き寄せれば、個人で難しい案件を処理していた人が、今度は部下の仕事や役割を決める立場に移る。自分の判断が、その仕事を担う人の処遇にも関わってくる。リーダーを選ぶときには、こうして任せる仕事の範囲が変わることまで考える必要がある。
「頭のよさ」よりも
重要な資質とは?
2012年6月3日、中国・重慶での講演で、稲盛は次のように述べている(『日経トップリーダー』2023年4月1日号)。中国・明代の思想家、呂新吾(ろしんご)の『呻吟語(しんぎんご)』を引いた。
その区分は、第3等が「聡明才弁(そうめいさいべん)」、第2等が「磊落豪雄(らいらくごうゆう)」だ。順に、頭のよさや弁舌、細事にこだわらない豪快さ、を指す。







