去る8月8日、先送りされてきた中期財政計画が閣議「了解」された。その特徴を端的にいえば、財政再建目標は堅持するが、消費増税を含め、その達成手段については、結論を先送りしていることである。歳出削減など痛みを伴う改革には政府・与党内で厳しい調整が必要だが、それを意図的に回避したのが実態だ。中期財政計画が財政再建目標を達成するための信頼性ある計画になっているかどうかを検証する。
これまで先送りされてきた中期財政計画が8月8日に出された。当初閣議決定されるといわれていたが、2014(平成26)年度予算の概算要求基準と合わせて閣議了解となった。これらは、厳密な解釈からいえば、政府として約束したものではない(概算要求基準は従来より通常閣議了解事項)。安倍政権は、来年4月に消費税率を8%に引き上げるかどうかの決定を今秋に先延ばしたので、消費増税を前提とした計画を政府として正式に「決定」することはできないという理屈である。
ただ、近年、政府の閣議決定事項は簡単に破られるので、閣議了解でも閣議決定でも五十歩百歩かもしれない。問題は中身である。今般の中期財政計画の中身が、安倍政権として既に決定した財政再建目標を達成するための信頼性ある計画になっているかどうかが重要である。
第1次安倍政権と第2次の相違
第2次安倍政権では、民主党政権時代休眠していた経済財政諮問会議が復活した。それは評価すべき点だが、予算や財政については、従来の諮問会議とは異なる点が多い。第1次安倍政権の財政運営を思い出してみよう。
第1次安倍政権の財政運営の基本となったのは「骨太の方針2006」(「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」(2006年7月閣議決定)である。これは、小泉政権の財政構造改革路線の集大成であり、そのポイントは、今後の財政再建の方法を具体的に書きこんだ「歳出・歳入一体改革」を盛り込んだことであった。
骨太の方針2006の発表後に誕生した安倍政権は、これを踏まえ2007年度予算を編成し、政府案決定後の2007年1月に、財政再建の道筋を定めた「日本経済の進路と戦略について」を閣議決定している。ここでは、2010年代初めのプライマリーバランス(注)の均衡達成という財政再建目標とその達成手段である歳出・歳入一体改革の堅持・具体化が書かれている。今議論されている言葉でいえば、これが「中期財政計画」に相当する。また、内閣府は、2007年度予算案に基づき、財政再建目標との整合性を評価するために、経済財政の中期的な姿を示す「内閣府試算」を公表している。
(注)プライマリーバランス(PB)、基礎的財政収支のこと。経常的な経費を税金など収入でどれくらい賄えてるいかを見る指標である。家計になぞらえれば、食費や光熱費、教育費などに日常経費を給料でどのくらいカバーできているかということ。PBが黒字なら家計(財政)を維持するために、新たな借金を重ねる必要がなくなる。