私は台北駅で台鉄弁当を買い、改札を抜け、すぐにホームに上がった。スタッフは穏やかで、トラブルもなかった。車内は清潔で、座席はゆったり。約100分の旅で、左営駅に着いた。窓の外には台湾西部の田園と都市が流れていった。

 排骨の脂がご飯に染みた弁当を頬張る幸せ。あれは観光客向けの「アトラクション」ではなく、台湾市民の日常そのものだった。

 ただ、高速鉄道を比べるなら、乗り心地や運賃だけでなく、その事業を支える資金にも目を向けたい。Whooshでは、中国からの融資と、その返済負担が大きな問題となっている。

「国家保証を求めない」条件
結果はどうだったか

 Whooshの事業費の75%は、中国開発銀行からの融資で賄われた。日本は2015年の競争入札で金利0.1%という極めて低利の円借款を提示したが、最終的にインドネシア政府は中国案を採用した。

「国家保証を求めない」という甘い条件に飛びついたのである。

 結果はどうだったか。

 建設費は60億ドル超から73億ドルへ膨張した。当初、国家予算の投入も政府保証も不要とされた事業だったが、ジョコ・ウィドド前大統領は途中で方針を転換し、結局は国家予算を投入することになった。

 汚職撲滅委員会(KPK)は土地収用を巡る不正疑惑の予備調査を進めている。国有地が政府に転売され、その価格が水増しされていた疑いが浮上している。

 習近平の「一帯一路」戦略の代表的な事業として建設されたWhooshは、移動時間を大きく短縮する一方、開業後も赤字が続き、巨額の債務返済に苦しむ巨大インフラとなっている。サウスチャイナ・モーニング・ポストの2026年9月の報道によると、政府は債務返済を財務省側に移す準備を進めている。当時の財務相が示した返済案では、期間は80年、年間返済額は約1兆ルピアに及ぶ。

 こうした財務上の問題は、Whooshだけに特有のものではない。台湾新幹線も財務難を経験した。だが、2015年には政府系の出資を伴う財務再建を行った。

 今では台湾新幹線は安くて、便利で、安心で、市民の足として定着している。今回の旅でも、運賃の手頃さや便利さ、安心して乗れる快適さを実感した。そして、その心臓部には日本の技術が脈打っている。

 台北駅で買った台鉄弁当の排骨(パイグー)を頬張りながら、私は素直にそう思った。