エアライン・鉄道の進路Photo by Norihiro Okawa

国内二大エアラインが海外ホテル大手との連携強化を進めている。全日本空輸(ANA)は2026年4月、英IHGホテル&リゾーツと、マイル・ポイントの相互交換やANAの上級会員へのホテル特典付与を含む包括提携を発表。日本航空(JAL)も7月、米マリオット・インターナショナルと、会員資格を相互に優遇する「ステイタスマッチ」を開始した。一見すると似た動きに思えるが、両社の設計思想は大きく異なる。長期連載『エアライン・鉄道の進路』の本稿では、JALのマイレージ事業を統括する西田真吾執行役員に、提携の真意とマイル事業の成長シナリオを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 大川哲拓)

JALが自社ステイタスをマリオット会員に開放!
上級会員増によるラウンジ混雑対策は?

 日本航空(JAL)便に乗らなくても、米ホテル大手マリオット・インターナショナルの一定以上のエリート会員なら、自動的にJALの上級会員資格を得られる――。世界最大のホテルチェーンとの新たな相互送客の取り組みが2026年7月から始まった。

 連携の核となるのが、JALのマイレージプログラム「JALマイレージバンク(JMB)」と、マリオットの旅行会員プログラム「マリオット・ボンヴォイ」間の「相互ステイタスマッチ」だ。

 具体的には、マリオットの会員がJMBのアカウントと連携すれば、ステイタスランクに応じて、JALの上級会員資格の基準となる「FLY ON ポイント(FOP)」が付与される。例えば、マリオットの最上級ランクに当たる「アンバサダーエリート」は年間4万FOP、一つ下の「チタンエリート」は年間3万FOPを得られる。

 JALの上級会員である「クリスタル」になるには年間3万FOP以上が必要なので、マリオットのチタンエリート以上であれば、自動的にJALのクリスタル会員以上の資格を得られるのだ。また、「プラチナエリート」は2万FOP、「ゴールドエリート」は1万FOPが毎年進呈される。JALの上級ステイタス獲得に向け、強力な“げた”を履かせる仕組みとなっている。

 こうした特典は一方通行ではない。JALのサファイア会員であれば、マリオットの「シルバーエリート」、一つ上のJGCプレミアならゴールドエリートのステイタスが無条件で得られる。

 全日本空輸(ANA)も4月、英IHGホテル&リゾーツとの包括提携を発表。マイルとポイントの相互交換や、対象の国際線搭乗で双方のマイル・ポイントが同時にたまる特典を備える。ANAの上級会員ならIHGの会員特典を受けられるステイタスマッチも含め、10月以降に開始する予定だ。

 ただし、IHG側にはANAのステイタスを提供しない“片方向”の内容にとどまる。ANAは自社会員のロイヤルティーを高め、既存の優良顧客を囲い込むことに重点を置いたとみられる。

 対するJALは、海外客との接点拡大を主眼とし、本来は搭乗実績でしか得られないFOPの提供に踏み切った。マイレージ事業を管掌する西田真吾執行役員マイレージ・ライフスタイル事業本部長は「JMBプログラムの根幹で、“虎の子”であるFOPを外部に出すのは、かなり絞られた戦略的パートナーシップだからこそ」と強調する。

ダイヤモンド編集部の取材に応じるJALの西田真吾執行役員ダイヤモンド編集部の取材に応じるJALの西田真吾執行役員 Photo by Yoshihisa Wada

 とはいえ、自社ステイタスを開放することは、“もろ刃の剣”でもある。航空各社にとって、空港ラウンジの混雑などのステイタス価値の希薄化が喫緊の課題となっているからだ。

 特にANAは、スーパーフライヤーズカード(SFC)会員の増加に伴うラウンジ混雑解消のため、「年間決済額300万円」の新たな条件を設けることを4月に発表。会員らからの猛反発を受けて見直しに追い込まれている。

 ステイタスマッチによって上級会員が激増すれば、既存顧客の満足度を低下させかねない。そのような“副作用”も懸念される中、なぜJALは会員数2億8300万人を有するマリオットとの相互ステイタスマッチに踏み切ったのか。そして開始から2カ月、期待していた効果は得られたのか。

 次ページでは、西田執行役員へのインタビューの一問一答を掲載。マリオットと提携に至った経緯や“虎の子”のFOPを差し出した狙い、ラウンジ混雑を防ぐ制度設計や、今後のマイル事業の成長シナリオに迫る。