住宅ローンと減税が
「持ち家は当たり前」を定着させた

 国は後押しをさらに強めた。1972年には、いまの住宅ローン減税につながる税の優遇が生まれる。ローンを組んで家を買った人の所得税や住民税を安くする。「税金をまけますから、どうぞ家を買ってください」という国からのあからさまなメッセージである。

 ローンと減税がそろい、普通の会社員にも家が買えるようになった。まわりの同僚が、隣近所が、次々に家を建てはじめる。新しい家に家具や家電をそろえ、家族で暮らす。その姿が「豊かな暮らし」の象徴として拡がっていった。そうなると人は家を持つことに憧れ、まだ持っていない自分を意識するようになる。

 国が用意した買いやすさがいつしか庶民の憧れに変わり、ただの経済政策は人生の「夢」に化けた。プロパガンダは見事に成功したのだ。

 でも、プロパガンダが成功したときの前提はもう残っていない。人口は減り、空き家は全国で900万戸を超えた。地価が上がり続けると期待できるのは大都市のごく一部のみで、木造の一戸建てなら建物は築20~25年で値段がつかなくなる。働き方も変わった。転職は当たり前、働く場所さえ会社に縛られなくなったいま、35年ローンはひとつの土地に人生を縛りつける買い物である。

 それでもプロパガンダはいまだに残っている。祖父母は家を建てた。親もローンを組んで建てた。その家で育ったあなたは、いつしか「家を持つのが当たり前」の空気を吸って大人になった。そしていま親から「家はまだ買わないのか」と聞かれる。国がわざわざ言わなくても、親が代わりに言ってくれる。刷り込みはこうして仕掛けた側の手を離れ、血縁というルートで勝手に受け継がれていく。

「家なら資産として残る」は
ごく一部にしか当てはまらない

 不動産業者は決まって「賃貸は払って終わりだが、家なら資産として残る」と言う。このセールストークを真に受けてはいけない。

 資産になる家はごく一部。残念ながら、世の中の大半のマイホームはまともな資産にはならない。