高市政権「恣意的」な情報発信が招く金利上昇、時代錯誤な高圧経済論の旗は本当に下ろしたのかPhoto:REUTERS/AFLO

高市政権の経済財政政策に関する発信が迷走している。米国からリフレ政策の転換を促され、表面上は否定し始めたものの、日本銀行に対する公式な意見表明を読み解くと、利上げに慎重な姿勢は変えないというのが本音のようだ。政権が「リフレ」の定義を都合よくもてあそぶ対応に終始するならば、長期金利上昇と円安の同時進行は止められないだろう。(立教大学経済学部特任教授 下田知行)

「日本にリフレ政策をやめるべきだと伝えた」
ベッセント財務長官に後ろから撃たれた高市政権

 高市政権の経済財政政策に関する市場への発信が迷走している。

 そもそもの発端は、9月1日に閉幕したG20財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、スコット・ベッセント米財務長官が「日本に(財政拡張と金融緩和に前向きな)リフレ政策をやめるべきだと伝えた」と発言したことだ。

 これを、「利上げに消極的な日本銀行を批判し、早期の利上げを迫った」と解釈する向きもある。だが、そうではないだろう。

 日銀は7月31日の金融政策決定会合後の植田和男総裁の記者会見で、「特に、基調的な物価上昇率が2%の物価安定の目標を超えて上振れていくリスクが顕在化し、それがその後の経済に悪影響を及ぼすことがないよう」にすることが重要であると、物価の上振れリスクを強調。利上げについても、「次回以降の決定会合において、しっかりと議論」と言及し、次回(9月)利上げを排除しなかった。また、8月27日の氷見野良三副総裁講演でも、利上げペースの加速を示唆していた。

 ベッセント長官発言は日銀に向けられたものではなく、高市政権のリフレ政策を志向する姿勢に向けられたものであることは金融市場ではコンセンサスといってよい。高市首相がそれを理解しているかは定かでないが、片山さつき財務相にとってはショックだっただろう。

 片山大臣はG20後の会見で、各国から日本の財政への懸念が示されたのかを記者から問われ「驚くほどなかった」と強調している。火消しに追われた格好だが、ベッセント長官が自身のXで植田総裁との2ショット写真をポストする一方、片山大臣との写真はなかった。また、米財務省も植田総裁との会談については「Readout(公式会談要旨)」を公表する一方、片山大臣との会談については何も言及しないなど、“塩対応”ぶりは明らかである。

 ちなみに、ベッセント長官は5月に来日し、高市首相や片山大臣と会談した際にも政権のリフレ姿勢にくぎを刺したとみられており、9月1日の発言は「5月にもすでに伝えていたよね」とキレ気味の発言だったと筆者は理解している。

 しかし、これで政権のスタンスが変わったかといえば、怪しい。