2万人をみてきた組織開発コンサルタントで『組織の違和感』の著者である勅使川原真衣氏が、実際に職場に分け入って考えた、組織変革のコツを伝えます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

組織の違和感何でもできるPhoto: Adobe Stock

「できないこと」を減らせば、本当に成長なのか

 組織では、「何でもできる人」が重宝されがちです。

 営業もできる。企画もできる。調整もできる。数字にも強い。人とも話せる。

 できることが多い人ほど、評価されやすい。

 だから育成でも、「苦手をなくそう」「もっと幅広く経験しよう」と言われます。

 もちろん、できることが増えるのは悪いことではありません。

 ですが、「何でもできる人」を目指すのが、大人のたしなみなのか? というとそうとも言えないと私は考えています。

苦手をなくすほど、強みが薄まることがある

 たとえば、じっくり考えてから話す人がいるとします。

 会議では発言が少なく、即答も得意ではない。

 すると、「もっと積極的に発言しよう」「その場ですぐ答えられるようになろう」と上司から言われることがあります。

 本人も努力して、結果的に以前より早く話せるようになるかもしれません。

 でもその一方で、多角的に考え、リスクを洗い出したうえで問題提起してくれることが生かされにくくなる場合もあります。

 逆に、思いついたらすぐ動ける人て、まさに走りながら考えるようなタイプの人に、「もっと慎重に」「もっと丁寧に」「リスクはすべて検討したのか?」と求め続ければ、その人のある種、衝動的なエネルギーが失われることもあるでしょう。

 つまり、その人の「持ち味」がなくなってしまうのです。

 組織では、つい「できないこと」に目が向きます。

 プレゼンが苦手、調整が苦手、細かい作業が苦手。

 すると、その穴を埋めることが育成の中心になります。

 でも、苦手を全部平均まで引き上げた結果、その人の得意なことに使える時間やエネルギーが減ってしまったら、本当に組織にとってプラスなのでしょうか。

「一人で全部できる」より「組み合わせて強くする」

 組織では、一人ひとりを万能にするより、人と人、人と仕事の「組み合わせ」を見ることが大切です。

 細かい調整が得意な人と、大胆に方向を決めるのが得意な人。

 人前で話すのが得意な人と、情報を整理するのが得意な人。

 新しいことを始めるのが得意な人と、最後まで丁寧に仕上げるのが得意な人。

 違いがあるからこそ、組み合わせたときにチームとして強くなります。

 つまり、全員を同じ形に近づけることは、組織を良くすることにはつながらないのです。

 一見すると、「何でもできる人」が多い組織は心地よいでしょう。ですが実際には、みんなが似たような人になり、誰かにしか出せない価値が減っていくことがあります。

 だからこそ、「足りないこと」や「できないこと」ばかりに目を向けるのではなく、この人は、何なら自然にできるのか。どんな場面で力を発揮するのかを見るのが大事です。

 そして、苦手なことは、別の誰かの持ち味で補えばいい。

 全員が同じ形になる必要はありません。「何でもできる人」を増やすより、「この人だからこそできること」を増やす。

 そのほうが、組織は強くなります。