2万人をみてきた組織開発コンサルタントで『組織の違和感』の著者である勅使川原真衣氏が、実際に職場に分け入って考えた、組織変革のコツを伝えます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
「できないこと」を減らせば、本当に成長なのか
組織では、「何でもできる人」が重宝されがちです。
営業もできる。企画もできる。調整もできる。数字にも強い。人とも話せる。
できることが多い人ほど、評価されやすい。
だから育成でも、「苦手をなくそう」「もっと幅広く経験しよう」と言われます。
もちろん、できることが増えるのは悪いことではありません。
ですが、「何でもできる人」を目指すのが、大人のたしなみなのか? というとそうとも言えないと私は考えています。
苦手をなくすほど、強みが薄まることがある
たとえば、じっくり考えてから話す人がいるとします。
会議では発言が少なく、即答も得意ではない。
すると、「もっと積極的に発言しよう」「その場ですぐ答えられるようになろう」と上司から言われることがあります。
本人も努力して、結果的に以前より早く話せるようになるかもしれません。
でもその一方で、多角的に考え、リスクを洗い出したうえで問題提起してくれることが生かされにくくなる場合もあります。
逆に、思いついたらすぐ動ける人て、まさに走りながら考えるようなタイプの人に、「もっと慎重に」「もっと丁寧に」「リスクはすべて検討したのか?」と求め続ければ、その人のある種、衝動的なエネルギーが失われることもあるでしょう。
つまり、その人の「持ち味」がなくなってしまうのです。
組織では、つい「できないこと」に目が向きます。
プレゼンが苦手、調整が苦手、細かい作業が苦手。
すると、その穴を埋めることが育成の中心になります。
でも、苦手を全部平均まで引き上げた結果、その人の得意なことに使える時間やエネルギーが減ってしまったら、本当に組織にとってプラスなのでしょうか。
「一人で全部できる」より「組み合わせて強くする」
組織では、一人ひとりを万能にするより、人と人、人と仕事の「組み合わせ」を見ることが大切です。
細かい調整が得意な人と、大胆に方向を決めるのが得意な人。
人前で話すのが得意な人と、情報を整理するのが得意な人。
新しいことを始めるのが得意な人と、最後まで丁寧に仕上げるのが得意な人。
違いがあるからこそ、組み合わせたときにチームとして強くなります。
つまり、全員を同じ形に近づけることは、組織を良くすることにはつながらないのです。
一見すると、「何でもできる人」が多い組織は心地よいでしょう。ですが実際には、みんなが似たような人になり、誰かにしか出せない価値が減っていくことがあります。
だからこそ、「足りないこと」や「できないこと」ばかりに目を向けるのではなく、この人は、何なら自然にできるのか。どんな場面で力を発揮するのかを見るのが大事です。
そして、苦手なことは、別の誰かの持ち味で補えばいい。
全員が同じ形になる必要はありません。「何でもできる人」を増やすより、「この人だからこそできること」を増やす。
そのほうが、組織は強くなります。
忙しいリーダーに、効果のあることだけ

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太