株価チャートには、投資家たちの「買い」と「売り」の勢いが表れます。2000億円超を運用した元ファンドマネジャーで、楽天証券の窪田真之さんは、その動きをどう読み取っているのでしょうか。『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』の著者でもある窪田さんが、実戦で磨いたチャート術を「孫子の兵法」になぞらえて解説します。
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実践で使えるチャートの読み方を学ぼう
「孫子の兵法に学ぶ株式投資術」第5回をお届けします。この連載では、毎回チャートクイズを1つ出します。それを解くのに役立つのが、「孫子の兵法」の知恵です。
戦争と株式投資、まったく異なるように見えて、実は共通の要素がたくさんあります。そこをしっかり学べばチャートの読みがさらに上達します。私の連載を通じて、実戦に生きるチャート術をしっかり学んでください。
チャートのクイズに挑戦!
以下、A社とB社の7か月の株価チャートをご覧ください。どちらも今期最高益を更新する見込みで、中長期的な成長株として期待しています。
どちらかの株を20株ずつ、5回に分けて計100株買おうと思っています。
A社かB社、どちらを選んだ方が良いと思いますか?
出所:筆者作成
A社はAI・半導体関連株として人気が出て、株価が上昇しているところです。PER(株価収益率)40倍まで買われています。
B社は、法人向けにAIを活用したSaaS(サース)を提供する企業です。クラウドを通じてAIソリューションを提供し、高成長を実現しています。ところが、株式市場で「SaaSの死」(AIが高度化すると既存のSaaSはすべて不要になるという極論)という言葉がはやり、SaaS関連株が一斉に売られている流れを受けて、株価が急落しています。PERは12倍まで下がっています。
孫子の視点でチャートを見る
株価チャートは買い手と売り手が戦う場と思ってください。あなたは、買い手の軍を率いて戦況を見つめています。長期的に大きな戦果が得られそうだと思う時に、戦場へ出て行ってください。
そこで参考にしていただきたいのが、以下の教えです。
出所:「孫子の兵法」軍争編より抜粋して作成
「迂回(うかい)することが、かえって近道になることがある。後から出発したのに先に着く。これは迂直の計を知る者である」
源平合戦において「迂直の計」を活用して大きな戦果をあげたのが源義経です。一の谷の合戦で、平家は山と海に囲まれた強固な陣を構築し、正面から攻めた源氏の主力軍は苦戦していました。義経は少数の精鋭を率いて山中を大きく迂回し、背後の山から駆け下りて平家を急襲し、勝利しました。
屋島の戦いも同じです。平家は四国の屋島に強固な陣を構え、海から来る源氏の大軍に万全の備えをしていました。義経は少数の精鋭を率いて、遠く離れた阿波の勝浦に上陸し、大きく迂回して屋島を背後(内陸)から急襲して勝利しました。
クイズの正解は…
B社を買うべきと思います。
B社は高成長が期待される株なのに、市場の誤解によって株価が下がっています。すぐに100株買ってしまいたい所ですが、慎重にまず20株だけ買うのが良いと思います。
こういう急落する株を買っても、株価がすぐに上昇に転じることは稀(まれ)です。欧米の相場格言に「落ちてくるナイフをつかむな」があります。株価が急落している銘柄を買うな、という意味です。
実際、B社を20株買った後、株価は以下のように続落しました(B社は実在する会社の株価チャートをモデルとして作成しています)。
出所:筆者作成
ただし、短期的に株価がさらに下がることは、最初から計算の内です。株価が下がる中で少しずつ5回に分けて買っていきます。
最終的に以下のような形で、100株買えれば、株価の反発局面で大きな成果が得られます。
出所:筆者作成
一方のA社ですが、既に株価は大きく上昇した後ですので、ここから買い始めても、さらなる上値余地は小さいかもしれません。短期的な利益は得られそうですが、長期的なリターンは小さくなるかもしれません。
株価が急騰している成長株は、短期的にさらに上がりそうでも、長期的には大きな成果が得られそうにありません。株価が急落している成長株は、短期的にさらに下がりそうでも、長期的には大きな成果が得られるかもしれません。
あえて短期的に下がる可能性のある株を選ぶことで、長期的に大きな戦果をねらう「迂直の計」が有効と思います。
最後に1つ、注釈が必要です。このクイズの答えでA社を選んだ方も、必ずしも間違いとは言えません。短期的にはA社の方が株価が上がる可能性は高いと言えます。短期トレードだけ考えてA社を選んだのならば、間違いとは言えません。
窪田真之(くぼた・まさゆき)
楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト
慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネジャー歴25年。公的年金・投資信託・ニューヨーク上場ファンドなど、2000億円超の日本株運用を担当。2014年より現職。楽天証券「トウシル」で月間200万PVを超える人気の投資コラムを連載。「トウシル」のYouTubeで月間20万PVを超える自身出演の動画を配信中。内閣府「女性が輝く先進企業」表彰の係る選考委員・企業会計基準委員会「ディスクロージャー専門委員会」委員・日本証券アナリスト協会「企業会計研究会」委員などを歴任。『2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』(ダイヤモンド社)『2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーが明かす「超」成長株の見つけ方』(幻冬舎)など著書多数。



