食料品の減税やガソリン補助金で
物価はさらに上昇するとの警戒感

 10月の所信表明演説で高市首相は、「市場」という言葉に5回言及した。それに加えて、金利の急騰や円の急落時には歳入・歳出のバランスを見直すなど機動的に対応すると述べ、金融市場の信認を取り戻そうとした。

 しかし現実問題として、今月7日の長期金利は3.105%まで上昇し、円安傾向にも歯止めがかかっていない。9月末に「リフレ政策は終焉(しゅうえん)を迎えた」との発言があっても、金融市場の動きに大きな影響は見られなかった。

 投資家の多くが基本的に、首相の発言を本気で信用していないことが見て取れる。飲食料品の消費税を1%に引き下げることや、いわゆるガソリン補助金などの財政出動で、物価はさらに上昇するとの警戒感は強い。また、新規国債発行の上限が示されないことも、財政悪化の懸念を強めている。

 9月の日銀決定会合における城内実経済財政担当相の発言も、「日銀の独立性回復は難しい」といった見方を市場参加者に与えた。多くの投資家は、高市政策を「通貨供給量を増やし、物価上昇圧力を高める」という意味でのリフレ政策とみているのだろう。

 今月8日の衆院本会議で首相は、「リフレ政策が必要な局面ではない」と答弁した。「日銀の金融政策の自主性を尊重する」とも述べた。政府は無駄のない予算編成も進めるという。

 ただ、こうした発言を本気で信用する投資家は少ないのではないか。首相の発言と投資家の認識には、大きな隔たりがありそうだ。

 そろそろ高市首相は、本当の意味でリフレ政策の見直しを検討すべきだ。それによって、日銀の独立性を再認識し、円安を容認するような考えは修正につながるだろう。

 そうした姿勢を明確に示さないと、財源なき減税や補助金、政府主導の投資、社会保障費の増加で国債発行は膨らみ、長期・超長期金利の上昇と円安の傾向は続くだろう。

 高市首相に求められることは、長い目で見て、わが国に必要な経済政策をしっかり見直すことだ。短期的なバラマキ政策では、日本経済が本格的に立ち直ることは考えにくい。