金融市場からの信頼を回復しないと
円安・物価高が続き国民生活に負の影響

 高市首相の政策が、本当の意味で金融市場の信頼を回復できないと、私たちの暮らしに負の影響が及ぶことが懸念される。最も身近な影響は、円安による物価高だ。食料やエネルギーなど輸入品の価格が上昇し、せっかくの賃上げの効果は目減りする。

 長期金利の上昇は、固定型の住宅ローン金利や企業の借入金利の上昇につながる。それによって、株式や債券の価格が不安定化すると、年金や保険、個人の資金運用にマイナスが生じる。物価高対策のつもりの減税や補助金が、むしろ円安と金利上昇を招き、かえって家計を圧迫するという逆効果が発生することも考えられる。

 中長期的には、国債の利払い費の増加は財政の自由度を奪う。利払い負担が膨らむほど、社会保障や教育、防災など必要な支出に回せる余地が少なくなる。この問題は目下、財政難に悩むフランスの状況を見るとよくわかる。

 フランスでは、財政赤字の削減などをめぐりマクロン政権と、右派・左派政党の対立が激化している。国債は格下げされ、売り込まれた。今年7~9月期、10年債利回りの上昇幅は主要先進国中で最大。金利が上昇し、欧州の銀行株が売られるなど影響は深刻だ。年金改革や歳出削減をめぐり社会の対立が深まっている。

 こうなると、財政緊縮を実行せざるを得なくなるが、そのしわ寄せは広範囲に及ぶ。フランスの公立学校では予算削減に伴い、必要な教師の補充や学校設備の改修が追い付かない実態があるようだ。これに抗議するため、学生らが大規模なデモを行った。デモには労働組合も参加し、一部は暴徒化した。

 今すぐではないにせよ、高市首相が金融市場の信頼を回復できないと、わが国でも将来不安が高まり社会心理は不安定化するだろう。国債の格下げによって、銀行や企業の資金調達コストがさらに上昇する恐れもある。

 財政再建に向けた増税や、社会保険料の引き上げ、給付の抑制が起きれば、個人消費に甚大な負の影響を及ぼすリスクもある。企業が海外投資を重視すれば、円安圧力もさらに高まることも想定される。

 高市首相は、大規模な投資で経済成長を引き上げる構想を持つ。しかし、金融市場の動向次第では逆効果になる恐れすらある。

 政策の成否のツケは、現役世代のみならず将来世代が負う。そうした展開を懸念して、投資家は所信表明演説後も日本国債や円を売った。

 首相が発言と政策を一致させ、金融市場の信頼を取り戻すことが、国民生活を守るために必要不可欠な条件だ。

真壁昭夫さんのプロフィール