「それなら、訴えます」。部下から突然そう言われたら、上司はどう対応すればいいのでしょうか。慌てて説得したり、「会社に問題はない」と反論したりしたくなるかもしれません。しかし、対応を間違えると、部下との関係がさらにこじれ、問題が深刻化してしまうこともあります。では、部下から「訴えます」と言われたとき、上司がまずやるべきことは何なのでしょうか。『3000件の職場の悩みを解決したプロが教える リーダーのふるまい大全』の著者・本田淳也氏が、その対応を解説します。

部下から「訴えます」と言われたとき、上司がやるべきこと・ベスト1Photo: Adobe Stock

部下から「訴えます」その言葉だけでは、本気かどうかはわからない

「それなら、訴えます」

部下からこう言われると、上司は一瞬、言葉に詰まります。
ただ、この言葉は本気の場合もあれば、その場の感情で思わず口から出てしまったときもあります。
言葉だけでは、真意まではわかりません。

本当に訴える意思があり、実際に法的な手続きへ進んでいくようであれば、必要に応じて会社側も弁護士に相談して対応を協議していくことになります。
ただ、そこまで進まない段階でも、上司としてできることがあります。

トラブルには「深さ」がある

これまで3,000件以上の労働相談を受けてきて感じるのは、労使トラブルには大きく分けて5段階くらいの深さがあるということです。

まだ小さな不満の段階で相談を受けることもあれば、関係がすっかりこじれてから相談に来ることもあります。
大事なのは、1~2段階目くらいの早い時期に解消することです。この段階なら、話し合いで落ち着くケースも少なくありません。

ところが会社や上司の対応が後手に回ると、部下は「会社は何もしてくれない」と感じ始めます。その不信感が、トラブルをさらに深い段階へと進めてしまいます。

部下が何を求めているのか

このとき大事なのは、「訴えます」という言葉を重く受け止めたうえで、その部下が“本当は何を求めているのか”を見ることです。

ただ、本人が自分の要求をはっきり口にするとは限りません。これまでの経緯や背景、本人のちょっとした発言から考えていく必要があります。

お金を求めているのか。今の雇用を続けたいのか。退職自体は受け入れていて、失業給付など今後の生活を心配しているのか。あるいは、自分の扱われ方に納得できず、傷ついた気持ちを分かってほしいのか。
――求めているものは、ケースによって違います。

お金の問題だと思って条件の話ばかりしていたら、本人が求めていたのは「ひと言謝ってほしい」だった。
そんなすれ違いが、トラブルを長引かせることもあります。

言葉ではなく、その先を見る

会社と部下、どちらが正しいかを決める前に、まず相手の求めているものを知る。
それが、問題を深刻にしないために大切なことです。