松下幸之助氏 Photo:SANKEI
自分の利益を優先する人ほど成功するのか。それとも、他人に惜しみなく与える人こそ、長期的に成功するのか。経営学者の岩尾俊兵氏と文芸評論家の浜崎洋介氏が、ヘンリー・フォードや松下幸之助の実例から、人格とビジネスの成功を結びつける「ギバー」の力を解き明かす。※本稿は、慶應義塾大学商学部准教授の岩尾俊兵『武器としての経営思考』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。
経営者に求められる「人格」は
なぜ軽視されてきたのか?
浜崎洋介(以下、浜崎)哲学者の西田幾多郎が、非常に興味深い指摘をしています。人格とは「調和させる力」だと。僕なりに言い換えれば、人格者とは、世のさまざまな人と関係しながら、その場を調和に導ける人物のことです。その意味で「いき」な人物は、まさに人格者でもある。なぜなら「いき」とは、まさに媚態、意気地、諦めを使い分けながら、その場の「調和」(バランス)を演出することだからです。残念なことに近年は、経営者の「人格」が軽視され、野暮な人間が増えているようにも見えます(笑)。
岩尾俊兵(以下、岩尾)日本が経済的に停滞した「失われた30年」は、一部の人にとっては容易にカネが稼げた時期でもあります。デフレの時代で相対的にお金の価値が上がり、株式や不動産をもつ人は資産を増やすことができた。同時に、他者を搾取してでも利益を得られればいいという考え方が急速に広まりました。
しかし、私たちが生きているのはまさに他者との関係性のなかにある世界であり、商売も他者がいなければ成り立ちません。







