車の整備状態を確認する検査員写真はイメージです Photo:PIXTA

「終身雇用」「年功序列」「企業内組合」は、日本的経営の強みなのか。経営学者の岩尾俊兵氏は、その本質は別のところにあると指摘する。野中郁次郎氏との対談から見えてきたのは、従業員が知恵を出し合って価値を生み出す思想と、『論語』などの東洋哲学に通じる経営のあり方だった。日本企業が世界に発信すべき経営思想とは何か。※本稿は、慶應義塾大学商学部准教授の岩尾俊兵『武器としての経営思考』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。文章の初出は『中央公論』2024年12月号に掲載したものです。

日本的経営の「三種の神器」は
日本企業の強さを表しているのか

岩尾俊兵(以下、岩尾)米国出身の経営学者ジェームズ・アベグレンは「終身雇用」「年功序列」「企業内組合」が日本的経営の「三種の神器」だと主張しました。私はその3つは日本的経営の本質ではないと思います。本質はむしろ、「価値創造の民主化」にあるのではないでしょうか。それは「ヒトこそが経営資源であり、価値の源泉」という信念のもと、「従業員みんなで知恵を出し合い、価値を生み出す。そして、その果実を比較的平等に受け取る」思想です。

 この思想は、たとえば改善活動やQC、アメーバ経営、トヨタ生産方式というように、多くの日本企業で具体的な手法として現れます。あるいは日本の近代資本主義を築いた渋沢栄一の「合本主義」、道徳と経済を両立させるという考え方以来、脈々と受け継がれてきた日本企業の伝統であるとも言えます。

 アベグレンが言う三種の神器は、大事な資源であるヒトを囲い込むための手段ではあるけれど、本質とは言えないのではないか。私は、いわゆる「日本的経営」と区別するために、自著では「日本式経営」とあえて一文字変えています。