「何でも相談して」と言っているのに、部下はなかなか相談に来ない。問題が大きくなってから「なぜ早く言わなかった」と責めても、すれ違いは深まるばかりです。坪田信貴さんは、相談される上司になるには、部下を待つのではなく「上司から先に相談する」ことが大切だといいます。なぜそれだけで、部下との関係が変わるのでしょうか。本稿は、坪田信貴著『育てる。』(ダイヤモンド社)から一部を抜粋して紹介する。

「何でも相談してくれ」と言う上司ほど、部下から相談されない理由Photo: Adobe Stock

「何でも相談しろ」と言う人ほど、相談されない

 上司はよく、部下に言います。

「困ったことがあったら、何でも相談してくれ」

 親も子どもに言います。

「何かあったら、いつでも話してね」

 先生も生徒に言います。

「一人で抱え込まずに相談しなさい」

 でも、実際には相談されません。そして、問題が大きくなってから発覚すると、

「どうして、もっと早く言わなかったんだ」

 と怒ります。しかし、部下や子どもからすれば、

「早く言える空気ではなかった」

 のです。いつも正しそうに振る舞っている。間違いを認めない。失敗した人には厳しい。相談に行くと、

「で、君はどうしたいの?」

「それくらい自分で考えて」

「そんなこともわからないの?」

 と言われる。そんな人に、誰が相談するでしょうか。

部下から相談してほしいなら、まずリーダーは何をしなければいけないのか

「何でも相談して」

 という言葉より、その人が普段どのように振る舞っているかのほうが、はるかに強いメッセージです。完璧に見える人には、失敗を報告しにくい。何でも知っているように見える人には、「わかりません」と言いにくい。神のように優秀なリーダーには、「うまくいっていません」とは、なかなか言えません。

 普通の人間が、神様へ悩み相談に行くのは、ハードルが高すぎます(笑)。だから、部下から相談してほしいなら、まずリーダーのほうから相談する。

「実は、ちょっと、悩んでいることがあるんだけど」

「この件、どう思う?」

「僕には、まだ答えが見えていないんだ」

「あなたの知恵を貸してほしい」

 と、先に言うのです。

「意見を聞いてやる」と、「相談する」は違う

 ここで注意してほしいのは、「部下の意見を聞くこと」と、「部下に相談すること」は、似ているようで違うということです。会議で、

「一応、皆さんの意見も聞いておきましょう」

 と言う上司がいます。順番に意見を聞く。何人かが話す。最後に上司が、

「なるほど。参考になりました。でも今回は、最初の案でいきましょう」

 と言う。いや、最初から決まってたじゃん(笑)。

 結論を変える余地が最初からないのに、「あなたの意見を聞かせてほしい」と言う。これは、相談ではありません。「皆さんの意見も聞きました」というアリバイをつくるための儀式です。部下は、すぐ気づきます。

「ああ、この人は聞いているふりをしているだけだ」

「もう答えは決まっているんだ」

 と思えば、次から本気では話さなくなります。

 会議で何かを聞かれても、「特にありません」「いいと思います」とだけ答えるようになる。そして上司は、

「うちの部下は、自分の意見を持っていない」

 と嘆きます。いや、あなたが言わなくさせたんじゃないですか、という話です。本気で相談するとは、

「自分の中に、まだ答えがない」

「あなたの考えによって、結論が変わる可能性がある」

 という状態で話すことです。

「この事業を続けるか、やめるかで迷っている」

「この人を責任者にするべきか、まだ決めきれない」

「いまのチームには、何が足りないと思う?」

「僕の伝え方で、直したほうがいいところはある?」

 そうやって、自分が本当に悩んでいる問題を渡す。それが相談です。