苦手な人を見ると、何をしても「やっぱり嫌だ」と感じてしまう。そんな経験はないでしょうか。坪田信貴さんは、相手を好きになる努力よりも、「良いところを20個探す」ことを勧めます。実際、『ビリギャル』のさやかさんが試したところ、前日まで嫌っていた同級生への見方が一晩で大きく変わりました。相手は何も変わっていません。変わったのは何だったのでしょうか。本稿は、坪田信貴著『育てる。』(ダイヤモンド社)から一部を抜粋して紹介する。
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嫌いな相手の良いところを20個探す
人を育てる立場にいるなら、ぜひ一度やってみてほしいことがあります。
自分が苦手だと思っている人、できれば「大嫌いだ」と思っている人を一人、思い浮かべてください。そして、その人の良いところを20個、書き出してみてください。
「いやいや、良いところなんて一つもないですよ」
そう思った人ほど、ぜひやってみてください。性格で見つからなければ、服装でもいい。肌がきれい、字が読みやすい、声がよく通る、遅刻をしない、使っている消しゴムのセンスがいい、歩くときに大きな音を立てない。何でも構いません。とにかく、無理やりでも20個ひねり出すのです。
なぜ、そんなことをするのか。相手を好きになるためではありません。嫌いな相手と無理に仲良くするためでもありません。自分が、相手の一つの側面しか見ていないことに気づくためです。
人は誰かを嫌いになると、その人の嫌な部分ばかりを探すようになります。
「あの人は話が長い」
「いつも自分のことばかり話す」
「人の意見を聞かない」
「また今日も偉そうなことを言っている」
一度「嫌い」というアンテナを立てると、相手が何をしても、嫌いな理由に変換されます。挨拶をすれば、「わざとらしい」。黙っていれば、「感じが悪い」。意見を言えば、「出しゃばり」。意見を言わなければ、「やる気がない」。もう、何をしてもダメです(笑)。
しかし、それは本当に相手のすべてなのでしょうか。嫌いな部分があることと、良いところが一つもないことは、まったく別です。
「先生! あの子、超いい子だった!」
『ビリギャル』の主人公であるさやかちゃんにも、どうしても好きになれない同級生がいました。彼女は、その子のことを僕に何度も愚痴っていました。
「私の真似ばかりしてくる」
「本当に嫌なんだよね」
「絶対、私のことを意識してる」
「好きじゃない」
あまりにも毎回言うので、僕はある日、こう言いました。
「わかった。じゃあ、その子の良いところを20個、挙げてみて。それが今日の宿題ね」
すると、さやかちゃんは即答しました。
「20個どころか、良いところなんて1個もない」
そこで僕は言いました。
「何でもいいから。肌がきれいでも、良い消しゴムを持っているでも、歩くときに音を立てないでもいい。とにかく20個見つけられないようじゃ、慶應なんか受からないから!」
もちろん、「嫌いな子の良いところを20個挙げること」と「慶應大学に合格すること」に、直接の関係があるかどうかはわかりません(笑)。でも、物事を一方向からしか見られない人が、難しい問題を解けるはずがない。そういう意味では、間違ってはいないと思います。
すると翌日、さやかちゃんは400字詰めの原稿用紙に、その子の良いところを20個以上書いて持ってきました。そして、教室に入ってくるなり、満面の笑みでこう言ったのです。
「先生! ○○ちゃん、超いい子だった!」
昨日まで散々悪口を言っていたのに、です。書いているうちに、
「この子は、すぐに友達を助けようとする」
「私の意見もちゃんと聞こうとしてくれる」
「遅刻もしない」
「約束も守る」
「意外とまわりをよく見ている」
と、いままで見えていなかった部分に気づいたのです。そして、
「すごくいい子じゃない?」
と、まるで以前から自分がその子の良さを知っていたかのように言います。そこで僕が、
「いや、君、昨日まで毎日のようにその子の文句を僕に言っていたんだよ。どう思う?」
と聞くと、今度は、
「私が最悪。こんないい子いない」
と、自分を責め始めました。こちらも少し極端なのですが(笑)、彼女の中で、相手を見るスイッチが完全に切り替わったのです。
人は「探しているもの」しか見つけられない
これは、いわゆる「カラーバス効果」の好例です。人は、ある情報を意識すると、それに関する情報が自然と目に入りやすくなります。たとえば、「次に買う車は赤がいいな」と考え始めると、街を走っている赤い車が急に増えたように感じます。もちろん、一晩で赤い車の台数が増えたわけではありません。もともと存在していたのに、自分の意識に入っていなかっただけです。
人間関係も同じです。「この人は嫌な人だ」と思って見れば、嫌なところばかりが目に入ります。「この人の良いところを20個探そう」と思って見れば、いままで見落としていた良い部分が少しずつ見えてきます。
相手は、昨日と何も変わっていません。変わったのは、こちらの見方です。
僕たちはつい、「あの人が変わってくれたら」「もっと素直になってくれたら」「もう少し感じよく接してくれたら」と、相手が変わることを求めます。しかし、相手を変えようとする前に、自分が相手のどこを見ているのかを変えたほうが、圧倒的に早い。嫌いな人の美点を20個探すというのは、相手を変えるワークではありません。自分の視点を変えるワークなのです。








