同じ人なのに、ある相手には素直で、別の相手には反抗的になる。坪田信貴さんは、「素直さ」は本人の性格だけで決まるものではなく、相手との関係によって変わるといいます。部下や子どもが話を聞いてくれないとき、変えるべきなのは本当に相手なのでしょうか。人を育てる側が先に見直したいこととは。本稿は、坪田信貴著『育てる。』(ダイヤモンド社)から一部を抜粋して紹介する。
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「素直じゃない部下」は、本当に素直じゃないのか
これまで15万人以上の方に講演をしてきましたが、最も多い質問の一つが、「素直じゃない部下を、どうしたらいいですか」というものです。そのとき、僕は必ずこう答えます。
「素直かどうかは、その人の性格ではなく、相手によって変わるものです」
つまり、「素直な人」と「素直ではない人」がいるのではありません。
「この人には素直になる」
「この人には反抗的になる」
という反応があるだけなのです。
実際、『ビリギャル』のさやかちゃんも、僕やお母さんにはとても素直でした。しかし、学校の先生やお父さんには、かなり反抗的でした。同じ人物なのに、相手によって態度がまったく違うのです。
人が素直になるのは、「自分を理解してくれている」と感じる人、あるいは「理解しようとしてくれている」と感じる人に対してです。逆に反抗的になるのは、「自分のことを全然わかっていないのに、上から正解を押しつけてくる」と感じる人に対してです。
だから、「うちの部下は素直じゃない」「うちの子は反抗的だ」と感じたときは、相手の問題だと決めつける前に、一度、自分に問い直したほうがいい。
「僕は、本当にこの人を理解しようとしているだろうか」
「本人が何を考え、何に困り、何を恐れているのかを聞いただろうか」
「自分の答えを押しつける前に、相手の話を最後まで聞いただろうか」
「お前のことは全部わかっている」が一番危ない
ここで重要なのは、「理解しているかどうか」ではありません。「理解しようとしているかどうか」です。
「お前のことは全部わかっている」
これは最悪です。自分の気持ちさえ完全にはわからないのに、他人のことを全部わかっているはずがありません。だからこそ、
「君のことを理解したいと思っている。でも、まだまだわからないことだらけなんだ。だから、教えてほしい」
この姿勢は、必ず相手に伝わります。
ここまで話すと、多くの親御さんや上司の方が、こう言います。
「それはわかるけど、そんな時間がないんです」
確かにそうだと思います。仕事も家庭も忙しい。余った時間があれば休みたいし、寝たいし、自分の好きなことをしたい。相手の話をじっくり聞き、行動を観察し、その人の気持ちを想像することは、簡単ではありません。
しかも、時間をかけたからといって、すぐに相手が変わるとは限りません。こちらが1時間話を聞いた翌日に、急に成績が上がったり、売上が伸びたり、素直になったりするわけではない。
人を育てるとは、「未来の可能性」に先に時間を使うこと
それでも、人を育てるためには、その時間を先に使わなければなりません。人を育てるというのは、ある意味で「未来の可能性に投資すること」だからです。
いますぐの効率だけを考えれば、相手の話を聞くよりも、
「いいから、これをやって」
「前にも説明したよね」
「言われた通りに動けばいいんだよ」
と指示したほうが早いでしょう。
しかし、それを続けている限り、相手は自分で考えるようにはなりません。指示を待ち、正解を教えてもらう人になるだけです。
一方で、相手の考えや価値観に耳を傾け、その人がどこでつまずいているのかを一緒に考える。その時間は、一見すると遠回りに見えます。でも、その遠回りをした人だけが、いつか自分で考え、自分で決め、自分で進めるようになるのです。








