部下にもっと主体的に動いてほしい。そう思うなら、指示を増やすより、上司のほうから大きな悩みを相談してみる。坪田信貴さんは、相談された人は「自分もこの組織の一員だ」と感じ、作業者から仲間へ変わっていくといいます。最終判断と責任は上司が持ちながら、部下を当事者に変える相談とはどんなものなのでしょうか。本稿は、坪田信貴著『育てる。』(ダイヤモンド社)から一部を抜粋して紹介する。
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大きな悩みほど、育てたい人に相談する
悩みは、誰にでも話すものではありません。だからこそ、大きな悩みほど、
「この人を育てたい」
「これから組織のことを一緒に考えてほしい」
と思う相手に、じっくり相談する価値があると思っています。
人は、自分に相談してくれた相手に対して、特別な感情を持ちます。
「自分は信頼されている」
「自分の意見には価値があると思ってくれている」
「この人は、自分を単なる部下としてではなく、仲間として見ている」
と感じるからです。悩みを話すというのは、少し怖いものです。弱いところが見える。判断力が足りないと思われるかもしれない。だからこそ、相談された側には、「自分だから話してくれた」という感覚が生まれます。そして、その瞬間から、相手の問題が少し自分の問題になります。たとえば、社長から、
「実はいま、会社の資金繰りが厳しい。最終的な判断は僕がするし、責任も僕が持ちます。何を残し、何をやめるべきか、現場にいるあなたの意見を聞かせてほしい」
と本気で相談されたら、どうでしょう。それまで、
「経営は社長が考えること」
「自分は、言われた仕事だけをすればいい」
と思っていた人でも、「自分にもできることはないか」と考え始めます。プロジェクトの責任者から、
「この企画が思うように伸びていない。僕はこう見ているけれど、現場からはどう見える?」
と聞かれれば、現場の人も、「自分たちのプロジェクトだ」と思いやすくなります。
親子でも同じです。
「あなたは子どもなんだから、言うことを聞きなさい」
ではなく、
「家族のことで、お父さんちょっと悩んでいることがあるんだけど、あなたはどう思う?」
と相談されれば、子どもも家族の一員として考え始めます。
リーダーが部下に相談することには、信頼関係をつくる以上の意味がある
相談には、相手を「こちら側」に招き入れる力があります。指示された人は、作業者になります。相談された人は、仲間になります。
そして、仲間になった人は、「自分なら、どう判断するか」を考え始めるのです。
リーダーが部下に相談することには、信頼関係をつくる以上の意味があります。単純に、良い答えが返ってくる可能性が高いのです。
リーダーが、組織全体のことを考えているのは確かでしょう。しかし、現場で起きていることを、すべて知っているわけではありません。
お客様がどこで不満を感じているのか。新しく導入したシステムのどこが使いにくいのか。若い社員が何に困っているのか。どの作業に無駄な時間がかかっているのか。現場にいる人のほうが詳しいことは、たくさんあります。
ところが、リーダーが何でも知っている顔をしていると、その情報が上がってきません。
「どうせ言ってもわからない」
「もう方針は決まっている」
「余計なことを言って、自分の仕事を増やされたくない」
と思うからです。だから、
「現場のことは、あなたのほうが詳しい」
「僕には見えていないことがあると思う」
「率直に教えてほしい」
と伝える。これは、リーダーが自分の価値を下げる言葉ではありません。むしろ、「自分が知らないことを、自分は知らないと認識できる」ということです。僕は、それができる人のほうが、よほど成熟したリーダーだと思います。
リーダーとは、すべての答えを持っている人ではありません。組織の中に散らばっている答えを、引き出せる人なのです。








