10月1日時点で最低賃金引き上げ額の
判断事由が分かる都道府県数

最低賃金引き上げ率は低下も、物価上昇が鈍化した割に高水準、審議内容の透明性などに課題

 10月に入り、全国各地で2026年度改定に伴う新たな最低賃金(最賃)の発効が進んでいる。全国加重平均は56円増の1177円となる。

 26年度は、高市早苗政権下での初の最賃改定であり、7月に閣議決定された骨太方針では、全国平均1500円という引き上げ目標の達成時期が、従来の「20年代」から「遅くとも30年代前半できる限り早期」へと事実上後ろ倒しされた。これにより、引き上げペースの鈍化を予想する向きもあった。

 また、25年度に続き、一部地域で過度な最賃引き上げが広がることが懸念された。引き上げ額は各地方労働局の最低賃金審議会(地賃審)が、厚生労働省の中央最低賃金審議会が示す目安を参考に判断する。25年度は、最賃額が低い地方部を中心に、近隣県などへの人口流出を抑制すべく、目安を大きく上回る引き上げを決める地域が続出した。

 26年度の最賃引き上げ率は5.0%と前年度(6.3%)を下回ったものの、物価上昇が大きく鈍化したことなどに鑑みると、むしろ高めの着地と評価される。引き上げ額の目安からの上振れ幅は全国平均で2.4円と前年度(5.4円)から大幅に縮小したが、目安超えの引き上げを行ったのは33道府県(前年度は39道府県)と依然多い。

 近年の積極的な最賃引き上げにより、特に中小企業の経営への影響は増している。今後も政府目標の実現や地域間格差是正のため、積極的な引き上げを目指す場合には、審議内容の透明化などを通じて使用者側の納得感や予見可能性を高めていくことも重要だ。

 この点、特に地賃審の情報発信には課題が多い。第一に、引き上げ額の判断事由をタイムリーに公開していない地域が少なくない。新たな最賃の発効が始まった10月1日時点でも、資料などを通じて26年度の判断事由を公開しているのは22都道府県に限られる。

 第二に、地賃審による判断事由の説明は、曖昧なものが多い。前述した22都道府県の26年度分の資料などを見る限り、引き上げ額を判断する上で、具体的にどの経済指標を重視し、どのように算定したのかが分からないものも散見される。地賃審には、こうした課題に取り組み、説明責任を果たしていくことが求められる。

(大和総研エコノミスト 田村統久)