実質賃金「プラス化」は賃上げよりも物価抑制策が“演出”、食料品消費減税でも危惧される経済新陳代謝の遅れPhoto:PIXTA

上半期の実質賃金の伸び率+1.3%
賃上げより消費者物価下落が寄与

 日本経済は、中東情勢の緊迫などにもかかわらず、今年1~3月期に前期比年率で+1.9 %の高めの成長を記録した後、4~6月期も+1.1%と底堅く推移した。

 輸出の回復のほか、個人消費も堅調で、この背景には、今年に入り実質賃金がプラスに転じ、毎月勤労統計調査の実質賃金(消費者物価・総合で実質化)の伸びは2月以降政府が目標とする1%を上回る状況が続いていることがある(図表1)。

 2026年の春闘賃上げ率は、経団連の8月4日の直近の最終集計では5.37%と、前年を0.02ポイント下回ったが、3年連続で5%台となり、連合集計による中小企業(従業員規模300人未満)の賃上げ率も4.69%と3年連続で伸び率を高めるなど、高い賃上げが続いている。

 こうした結果、名目賃金(現金給与総額)は今年2月以降、前年同月比3%台で推移しており、基調を決める一般労働者の所定内給与は同3%台後半の伸びが続いている。

 未曽有の人手不足が続き、規模の大小を問わず、賃上げは人員確保に不可欠になっているなかで、賃上げモメンタムの定着を物語る。

 だが実質賃金「プラス化」の最大の要因は、名目賃金上昇よりも消費者物価の伸び率の低下だ。26年上半期平均の実質賃金伸び率は+1.6%と、25年平均の▲1.4%から3ポイントも高くなっているが、名目賃金伸び率の高まりによる分は1%ポイントに対し、消費者物価上昇率の低下による寄与は2%ポイント分を占める。

 見逃せないのは、その少なからずは、ガス電気代補助金などの政策的な物価抑制策の効果によるもの、ということだ。実質賃金上昇や経済堅調の“内実”は脆弱性をはらんだままだ。

 高市政権が2027年4月からの実施を掲げる「食料品消費税減税」も同じような危うさを持つことに注意が必要だ。