心理学者カール・ユングは、中年期を「人生の転換点」として位置づけました。転換点を基準に、人生を前半と後半にわけ、それぞれで、生きる課題が根本的に異なると主張、中年期を「人生の午後」と呼びました。
ユングによれば、人生前半(若年期~中年初期)は、社会的成功、キャリア形成、結婚、子育てなど外向きの課題に取り組む時期、人生後半(中年期以降)は、自分の内面や本来の価値観と向き合う時期、とされています。この転換点を基準に人生の意味合いが大きく変化するのです。
また、これまで社会的成功を追い求めてきた人ほど、自分自身の価値観や生き方を見直す必要に迫られるでしょう。この不安は決してネガティブなものではありません。むしろ、自分らしい人生を再構築するための重要なサインとも言えます。
60代に突入すると
老後資金が悩みの種に
一般調査(編集部注/Smart相談室が2026年5月に「相談」をテーマに調査・研究を実施。社会全体に潜む悩みの実態を把握するために、働く人2140人を対象にデータを分析した)では、60代の21.3%が「老後資金」に悩んでいると回答しました。
『悩みの統計学』(藤田康男、扶桑社)
60代は年金受給が視野に入る年代であるにもかかわらず、約5人に1人以上が経済的不安を抱えていることになります。背景には、長寿化によって必要な生活資金が増加していることがあるでしょう。かつては60歳前後で退職し、その後の生活期間も比較的短いものでした。
しかし現在は、80代後半から90代まで生きることが珍しくありません。退職後20~30年以上の生活を支える資金が必要となり、多くの人が「本当に足りるのだろうか」という不安を抱えています。さらに、医療費や介護費用への備え、物価上昇への懸念、年金制度への不信感なども不安を増幅させる要因です。実際には一定の資産を保有していても「将来の見通しが立たない」こと自体が大きな心理的負担になるのです。
行動経済学では、人は将来の損失を得られる利益以上に過大に見積もる傾向があることが知られています。老後資金の不安を完全になくすことは難しいですが、資産状況を可視化し、必要な支出と収入を整理することで、不確実性を減らすことはできます。老後資金の問題はお金の問題であると同時に、「将来を安心して描けるか」という心理的な問題でもあるのです。







