ユニクロ柳井正が「部屋が揺れる」ほど激怒した「わずかなミス」とは?ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長 Photo:JIJI

「部屋が揺れるほどだった」――。ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長による度重なる厳しい叱責で、社員たちは萎縮し、職場から笑い声が消えていたという。一方、大盛況の店舗でも柳井氏は手放しで喜ばず、現場に厳しい目を向けた。柳井氏は何に怒り、何を問題視していたのか。そして、厳しい指導は組織にどのような影響を及ぼすのか。元幹部の証言と経営学の研究から迫る。(イトモス研究所所長 小倉健一)

「実によく叱り、怒鳴ります」
「オフィスが揺れるほど」の怒り

 柳井正氏の怒りは、「オフィスが揺れるほど」だったという。2005年にユニクロの生産担当役員に就いた有賀誠氏が、人事専門サイト『日本の人事部』の連載第29回で振り返った光景だ。委託先の工場で服を作ってもらい、品質や納入日程を管理する生産部門が、柳井氏から繰り返し叱責を受けていた。

 有賀氏はこう振り返る。

「柳井正氏は実によく叱り、怒鳴ります。それは、オフィスが揺れるほどに感じられました。とりわけ生産部門はそのターゲットになっていたのです」

 新任の有賀氏が挨拶で冗談を言っても、社員は誰も笑わなかった。社員の採用や配置を担う人事の仕事をしてきた役員が来たのは、人員削減のためではないか。社員たちはそう警戒していたのだ。2022年に公表されたこの回想には、会話も笑いも少ない職場の様子が記されている。

 原宿店が大盛況だったときも、柳井氏は周囲の期待と違う反応をした。ファーストリテイリング元副社長の澤田貴司氏が、2018年のBizHintの対談で語っている。

 フリースを仕掛けた店舗の開店時、予想を超える客が集まった。いつも柳井氏に怒られていた澤田氏は、今度こそ褒めてもらえると期待した。ところが、柳井氏は混雑で店の評判を落とすことを気にかけた。

「人の案内、商品補充は大丈夫なのか」

 澤田氏が覚えているのは、こうした冷静な指示だった。集客に成功した責任者を前にしても、売り場で客が困らないかを確認していた。

 客が大勢来た日に、経営者が商品補充を気にする。細かい話に見えるが、せっかくの集客を売り上げにつなげるために欠かせない確認だ。澤田氏が紹介したこの場面には、大盛況の売り場で起こりうる混乱を先に考える柳井氏の姿がある。