2025年の2人以上の世帯のエンゲル係数

飲食料品の消費税減税、「税込み価格引き下げ」に疑問符、野党は政府に説明求めよ

 臨時国会が始まり、飲食料品にかかる消費税を2027年4月から29年3月までの2年間に限り8%から1%に引き下げる法案が議論される予定である。その背景には、25年の食料価格が20年比で約26%上昇するなど、食品を中心としたインフレの進行と、それに伴う購買力の低下がある。

 生活水準を捉える指標としては、消費支出に占める食料費の割合を示すエンゲル係数が用いられる。実質的な所得が低くても食料品への支出を大きく減らすのは難しく、一般的に、所得が低い世帯ほどこの割合は高くなる。

 日本のエンゲル係数は20年の27.5%から、25年には28.6%まで上昇した。こうした食費負担の重さが、減税を求める声の背後にあると考えられる。

 では、飲食料品の消費税減税は望ましい政策と呼べるのだろうか。

 論点の一つは「消費税を減税した分だけ、価格が下がるのか」という問題である。

 消費税が下がった分だけ食料品店が税込み価格を下げるとは限らない。消費税の引き下げが政策的に行われた欧州各国の事例を見ても、そのまま下がるケースもあれば、半分ほどしか下がらないケースもある。つまり、減税分の一部が、値下げではなく事業者の利益に回る可能性があるのだ。

 さらに、減税時の値下げよりも、増税時の値上げの方が大きいという非対称性を報告する研究もある。

 フィンランドの理美容業では、減税時の価格転嫁率は約40%、増税時は約79%だった。フランスの飲食店でも増税時の価格転嫁の影響が大きかった。一方、ドイツのスーパーでは減税終了時の値上げ幅が当初の値下げ幅を下回った。非対称性の方向は国や業種によって異なる。

 日本でも同様の非対称性が生じることになれば、減税終了後の価格が、減税を実施しなかった場合の価格を上回ってしまう事態も考えられる。

 インフレに伴う生活水準の低下に対して、飲食料品の消費税減税が本当に的を射た政策なのか。また、低所得世帯への給付を優先する場合と比べて、どのような利点があるのか。野党各党は政府与党に説明を求めるべきだ。

(東京大学公共政策大学院 教授 川口大司)