『その仕事、スケールするの?』は、シアトルの巨大IT企業で働く著者・福原たまねぎ氏が、世界一流の同僚から学んだ成果の出る仕事のやり方を明かす1冊です。今回は書籍の発売に先駆け、「シアトルで学んだ『本当に評価される人』の仕事の進め方」として、本文ではカットした原稿を特別に公開します。

ビッグテックPhoto: Adobe Stock

あることに気づいたパセリさん

「仕事はスピードが命」ではない。

世界の第一線で働く仲間たちは耳にタコができるくらい同じことを言う。

Is this scalable?(その仕事、スケールするの?)
Why are we doing this manually?(なんでそれを手動でやるの?自動化しないの?)

目の前に積み上がるタスクを一心不乱にスピード感を持ってこなすこと――それは評価されない。

そうではなく、同じ努力でも大きな成果につながるように仕事を組み立て直す。

ぼくが第一線の仲間を観察してつかんだのは、そういうスタンスの違いだった。

ぼくの同僚のパセリさんはまさにそれを体現していた。

パセリさんは黒髪ロングがよく似合うアメリカ人女性で、30代半ば。

よくしゃべる元気な人で、プロジェクト・マネージャーとしてぼくらの開発チームを支えていた。

当時、ぼくらは企画資料を作っては偉い人や関連チームに持っていき、その度に同じような指摘を受けてなかなか提案が通らないということを繰り返していた。PMの仲間たちは企画がスムーズに通らず開発に移れないまま、頭を抱えていた。

この状況を見かねたパセリさんはある行動に出た。

もともと秘書業務をしていて偉い人と距離が近かった彼女は、エグゼクティブのミーティングに同席させてもらったり、直接インタビューをしたりした。

すると、フィードバックの中身はほぼ毎回同じだということがわかってきた。

「このプロダクトは、顧客のどんな問題を解決するのか?」
「なぜ新しい機能を開発するのか?既存の機能では何が足りないのか?」
「この機能はどのようにスケールするのか?他のチームが使える仕様になっているか?世界中で展開できるか?」

そこでパセリさんは、こうした問いにあらかじめ答える形で企画書を書けるフォーマットを作った。それ以降、同じ指摘が来ることはほとんどなくなった。

このフォーマットが優れていたのは、パセリさん個人の経験とセンスを、だれでも使える形に変えたことだ。

新しいPMが入ってきても、同じフォーマットに沿って書けば一定の品質の企画書が仕上がる(再現性)。

提案が通りやすくなったことで新しい機能の開発がスムーズに進むようになり、世界中のユーザーに届くプロダクトを生み出しやすくなった(波及性)。

そしてやがて、PMたちは直近の偉い人からのフィードバックを自分たちでフォーマットに反映してカスタマイズするようになった。パセリさんの手を離れても、仕組みは進化しながら動き続けた(自走性)。

一度作ったフォーマットが、何人ものPMの仕事を何度も助け続ける。これがスケールする仕事だ。