いま、アメリカ西海岸にあるテック企業の創業者や従業員がこぞって使う思考法があります。『その仕事、スケールするの?』は、シアトルの巨大IT企業で働く著者・福原たまねぎ氏が、世界一流の同僚から学んだ成果の出る仕事のやり方を明かす1冊です。今回は書籍の発売に先駆け、著者の働き方を根本から変えたエピソードを先行公開します。

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「その場限りの努力」はしない

ニンジンさんは、シアトル生まれ・シアトル育ちのアメリカ人女性。ブロンドの髪と、高い背丈がチャームポイント。

優しくてよく笑うけれど、意見ははっきりと言う。

幼い子どもを育てながら、だれもが尊敬するリーダーとして活躍している。

その日は評価面談で、ぼくは正直、自信満々だった。

コロナ後のレイオフ(クビ)の嵐が吹き荒ぶなか、ぼくは努力してチーム全体の大事な目標をいくつも達成した。

「これだけやったんだから、きっと高評価だろう」。そう思っていた。

ニンジンさんはいつものとおり優しい口調でミーティングを始めた。

「まずは去年1年間のハードワークに感謝します。ありがとう。あなたの目標達成は素晴らしかったわ」

ほっとした。よかった。

でもその安堵は、次の言葉でハンマーで粉砕されるようにして消えた。

「でもね、あなたに期待しているのは目標を達成することではないのよ」

え……?

「それでは成果はその場限りで終わってしまうから、あなたにはもっとスケールする仕事をしてほしいの」

「もっと世界中の生活を便利にするための大きな意思決定をしてほしいの」

ぼくはその言葉を聞いて、正直とてもがっかりした。

チームの大事なゴールをいくつも達成し、毎日遅くまで粘った。

それでも「期待しているのはそこではない」と言われた。

成果とは「努力の物語」の産物――ぼくはずっとそう思いこんでいた。でもそれは違った。

頑張るべきは「車をつくること」であり、努力は最後の「アクセルを踏む」でしかない。

「努力だけでは評価されない」ということを、こんなにもシビアに、こんなにも残酷に告げられた瞬間だった。

しかし今振り返ってみると、あの面談がすべての転換点だった。

頭をハンマーで叩かれたような衝撃があったからこそ、「じゃあどうすればもっとスケールする仕事ができるか」――はじめて本気でそれを考えるようになった。