子どもの健やかな成長のために、毎日の食事で栄養バランスを意識している家庭は多いだろう。しかし、十分に食べさせているつもりでも、じつは大切な栄養素が不足していることがあるという。
なかでも見落とされがちなのが、骨や免疫だけでなく、脳の発達にも重要な役割を果たす、ある栄養素だ。小児科医によると、クリニックを受診した子どもの9割以上に不足が見られるという。いったい何が不足しているのか。そして、どうすれば補えるのだろうか。『医師が教える 子どもの習慣50の基本』から一部抜粋してお届けする。(ダイヤモンド社書籍編集局)

【小児科医が解説】脳の発達に必須なのに、9割の子どもで不足している「栄養素」は何?Photo: Adobe Stock

9割の子どもが不足するビタミンD

 当クリニックではほぼすべての患者さんに血液検査を行っていて、必ずビタミンDの数値も確認しています。
 9割以上の子どもがビタミンD不足で、明らかな欠乏状態の子は5割以上、重度の欠乏状態の子も2割くらいいます。もちろん大人も不足しています。

 ビタミンDの基準をより厳しく設定した大規模データでも日本の子どもの約半数が不足、3割が欠乏しています(14)。

 ビタミンDは全身に必要な栄養素で、骨、免疫(アレルギー)、皮膚において重要な働きをしています。

 また脳の発達のためにも絶対的に必須です。

 ビタミンDをキャッチする受容体は全身のほぼすべての細胞と組織にあり、脳内にも広く存在して、とくに小脳(運動機能に関与)、海馬(記憶力)、前頭皮質(高次機能=判断力、抑制力)に多く存在し、重要な役割を果たしています。

 脳内でビタミンDは、

●遺伝子やDNAなど生命情報に大事な役割を担っている
●ニューロンが傷ついたときに守る作用をもつ
●血液中のカルシウム濃度を一定に保つ働きをもつ

 など、ほかにもさまざまな役割を担っています。

ビタミンDが不足するとどうなるの?

 ビタミンDが欠乏すると、骨がゆがむ、髪の毛が薄くなる、皮膚が荒れる、免疫力が落ちるなどの作用があります。
 妊娠中の母体で欠乏していると、子どもの自閉症や精神発達症のリスクが高まることもわかっています。

 一般に脳では、

●脳機能の低下
 ・記憶力、高次機能、処理速度の低下

●メンタル面の不健康
 ・うつ、不安感、精神疾患リスクが上昇

 とくに子どもでは、

●神経発達症リスク
 ・自閉症、ADHD、チック、知的障害など神経発達症のリスク増加

 など、直接の原因ではない可能性もありますが、さまざまな関係が示唆されています。

ビタミンDはどう摂ればいいの?

 脳のためのビタミンDを確保するには、次の3つがポイントになります。

●食事から摂る
 卵、鮭やイワシなどの青魚、ほかビタミンDを含む食品を毎日しっかり摂る(しっかり=手のひら1杯分以上)。

●サプリメントから摂る
 信頼できる専門家が推奨しているサプリメントを服用する。ネットで販売されている商品には粗悪品がある。

●極端な紫外線対策をしない
 適度に日光に当たる。紫外線に当たるとビタミンDが生成される。

 2026年8月現在、クリニックなどで保険適用として処方できるビタミンD製剤には活性型ビタミンDというタイプがあります。
 ただこれには副作用の心配がややあります。そのため、保険適用外ですが、良質の天然型ビタミンDのサプリメントが安心です。

 赤ちゃんが摂れる液体タイプ、4歳ぐらいから摂取できる小さな錠剤タイプなども販売されています。

 安全で有効性が確認されているサプリメントを毎日摂ることで、不足・欠乏していたビタミンDは1年後の採血時には改善することがほとんどです。

 まずは、食品から摂り、適度に日光を浴びるところから実践し、心配でしたら一度、病院で血液検査を受けるとよいでしょう。

 ビタミンDは大人も不足している栄養素です。子どものころから摂取する習慣を身につけておけるとよいですね。

14 Yang L, Sato M, Saito-Abe M, et al. 25-Hydroxyvitamin D levels among 2-year-old children: Findings from the Japan environment and children’s study (JECS). BMC Pediatr. 2021;21(1):539. doi: 10.1186/s12887-021-03005-3.
伊藤明子(いとう・みつこ)

赤坂ファミリークリニック院長/小児科医/MD,MPH/BCIA認定ニューロフィードバック認定医
NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科修了。医師になる前から同時通訳者として天皇陛下や歴代首相、米国大統領の通訳を務め、現在も医学系会議を中心に活動している。通訳の仕事をしながら2児をもうけたあと、40歳で医学部を受験し、医師に。卓越した英語力を武器に、海外の学術論文から日々最新の情報をアップデートしている。メディア出演も多く、わかりやすい説明と親しみやすい人柄で子どもはもちろん、その親からの信頼も厚い。著書に『医師が教える 子どもの食事 50の基本』(ダイヤモンド社)などがある。