子どもが喜ぶからと、つい買ってしまう甘いおやつ。「少しくらいなら大丈夫」「虫歯や肥満に気をつければいい」と考えている親も多いのではないだろうか。
しかし、子どものころの糖分の摂りすぎは、体だけでなく、脳の発達や記憶力、学習能力にも悪影響を及ぼす可能性があるという。さらに動物実験では、過剰摂取をやめたあとも、その影響の一部が残ることが示されている。では、子どもの健やかな脳の発達のために、とくに気をつけたい「おやつ」とは何なのか。『医師が教える 子どもの習慣50の基本』から一部抜粋してお届けする。(ダイヤモンド社書籍編集局)

子どもの脳に深刻なダメージを与える、「恐怖のおやつ」ワースト1【小児科医が解説】Photo: Adobe Stock

糖を摂りすぎるとどうなるの?

 子どものときに糖を摂りすぎると、脳の発達や記憶・学習能力に悪い影響が出る可能性が、複数の研究から示されています。

 2018年に発表された米国で行われた研究では、妊娠中のお母さんの砂糖摂取量と子ども自身の砂糖入り飲料(ジュースや清涼飲料水など)を摂る量が、子どもの脳機能と関係していることが示されました(48)。

 具体的には、

●お母さんが妊娠中に砂糖を多く摂っていると、
 子どもの図形や空間を理解する力(非言語的知能)が低い傾向にあった

●子ども自身が砂糖入り飲料をよく摂っていると、
 言葉を使った思考力のスコアが低い傾向にあった

 というものです。

 また、倫理的な理由でヒトでの研究が難しい部分は、動物(おもにマウスやラット)を使った実験で詳しく調べられています。

 これらの研究では一貫して、子ども・思春期にあたる時期の糖の過剰摂取が脳にさまざまな悪影響を与えることが確認されています(49,50)。

 砂糖を摂りすぎると、さまざまなことが脳のなかで起きます。その結果、次のような影響が現れます。

●多動・衝動的な行動が増え、成長後も続く(51)
●注意力の低下、多動性・衝動性の症状が現れる
●脳の活動パターンや適応力が変化する

とりかえしのつかない「高血糖の呪い」

 とくに知っていてほしいのは、糖の摂取をやめたあとも、脳へのダメージの一部は残り続けると動物実験で示されていることです。

 つまり、「やめればもとに戻る」とは限らない、とりかえしがつかないということなのです。糖化研究者の間では、これを「高血糖の呪い」と呼んでいます。

 動物による複数の研究を総合的に見ると、妊娠中のお母さんも、成長中のお子さんも、砂糖、とくに砂糖入り飲料の摂りすぎには注意が必要です。

 脳が急速に発達する子ども・思春期はとくに影響を受けやすい時期です。そして、影響は「今だけ」ではなく、大人になっても続く可能性があります。

 ただし、これらの研究はあくまで「関連性」や「動物での影響」を示したものです。砂糖を少し食べただけで必ず悪影響が出るわけではありません。バランスのとれた食生活を心がけることが何より大切です。

 とにかく甘いジュースはなるべく飲まないようにしましょう。これは果汁100%ジュースも含みます。
 スナック菓子や甘い飲料を、当クリニックでは「見ない、買わない、持ち込まない」とお願いしています。

 子どもの時からジュースを飲む習慣がついてしまうと、大人になってもその習慣はなかなか抜けません。麦茶やお水などでのどを潤す習慣をつけられるといいですね。

48 Cohen JFW, Rifas-Shiman SL, Young J, Oken E. Associations of prenatal and child sugar intake with child cognition. Am J Prev Med. 2018;54(6):727-735. doi: 10.1016/j.amepre.2018.02.020.
49 Choe WH, Kim YJ, Lee KA, Lee YA. Neurochemical alterations in monoaminergic systems induced by excessive sucrose consumption from the juvenile period to adolescence in mice. Neurosci Lett. 2025;864:138308. doi: 10.1016/j.neulet.2025.138308.
50 Lin H, Tang Y, Wang S, et al. Altered cortical dynamics and adaptive behavior following early-onset sucrose overconsumption. Curr Biol. 2025;35(15):3650-3663.e6. doi: 10.1016/j.cub.2025.06.050.
51 Beecher K, Alvarez Cooper I, Wang J, et al. Long-term overconsumption of sugar starting at adolescence produces persistent hyperactivity and neurocognitive deficits in adulthood. Front Neurosci. 2021;15:670430. doi: 10.3389/fnins.2021.670430.
伊藤明子(いとう・みつこ)

赤坂ファミリークリニック院長/小児科医/MD,MPH/BCIA認定ニューロフィードバック認定医
NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科修了。医師になる前から同時通訳者として天皇陛下や歴代首相、米国大統領の通訳を務め、現在も医学系会議を中心に活動している。通訳の仕事をしながら2児をもうけたあと、40歳で医学部を受験し、医師に。卓越した英語力を武器に、海外の学術論文から日々最新の情報をアップデートしている。メディア出演も多く、わかりやすい説明と親しみやすい人柄で子どもはもちろん、その親からの信頼も厚い。著書に『医師が教える 子どもの食事 50の基本』(ダイヤモンド社)などがある。