安倍晋三政権は、消費税率を来年4月に引き上げるかどうか、学識経験者、財界、労働界、消費者団体の代表など有識者60人から意見を聴く「集中点検会合」を行った。消費税率引き上げへの賛否、引き上げた場合と引き上げを先送りした場合の景気や財政再建への影響、経済対策や税制改革の必要性など、有識者からさまざまな意見が表明された。安倍首相はこの会議の結果を踏まえ、GDPの改定値などの経済指標を考慮して、10月上旬頃までに消費税率を法律に従って引き上げるかどうか最終判断する。
日本で消費増税を実現するには、膨大な時間と労力が必要とすることを、あらためて痛感させられる。一方で、以前この連載で取り上げた英国の消費増税の事例を思い出した。英国では、首相が消費税増税を決断すれば、議会での審議も法律制定も必要なく、即日実行できる。また、危機対応のための省庁横断的な組織が必要ならば、これも法律制定なしに即日設立できるのだ(第25回を参照のこと)。その上、格付け会社が英国の「財政危機に対する即応性」を高く評価し、英国債に高い格付を与えているのだ。
本稿は、この有識者会議についての論評は行わない。安倍首相がこの会議を経て、最終的にどんな決断を下すのかも不透明だ。ただ、1つだけ指摘すれば、諸外国では、日本ほど消費増税実現に膨大な政治的エネルギーを費やさない事例もあるということだ。
「憲法改正」についての主張:
9条は日本を「ならず者国家」と認定するもの
さて、本題は「憲法改正」である。この連載では、憲法改正について独自の主張を展開した(第59回を参照のこと)。それは、「日本が戦争放棄という理念を実践していくことを証明するために、あえて憲法9条は改正すべき」という主張だ。これは、一般的な改憲派の「武力を行使できるようにするため」の改正とは一線を画している。
この連載では、憲法9条が、かつて近隣諸国を侵略した日本が再び「ならず者国家」にならないよう厳しく管理することを目的としていると考える。憲法9条がある限り、日本は厳しく管理することが必要な、中国や韓国が警戒し続けねばならない「ならず者国家」とみなされ続けることになるのだ。逆に言えば、憲法9条が撤廃された時に、初めて日本は「ならず者国家」のレッテルから脱することができるのではないだろうか。