債権回収や人材マネジメントの難しさに加え、反日デモや賃金上昇など、中国ビジネスのリスク因子は増えるばかり。けれども、それを理由に、今後10年間でもっとも成長する巨大市場を見過ごすべきではありません。中国ビジネスに弁護士として約20年携わっている村尾龍雄弁護士が、中国の経済・政治状況をふまえて、事業上のチャイナリスクとそのヘッジ策などについて紹介する連載の第1回は、「中国の消費市場は最大で8倍まで成長する」という見通しと、その根拠についてです。

中国の消費市場の未来は明るい!

 私が1995年に弁護士・税理士として中国に関わり始めてから、満18年になります。私が尊敬する漫画家の弘兼憲史先生と共同執筆した『島耕作の中国ビジネス最前線』(講談社、2003年)の刊行からも10年が経過しました。

 この間、まさに眼前で、中国はめざましい成長を遂げてきました。1人当たり名目GDP(国内総生産。国際通貨基金公表)は、1990年の341米ドルから、2000年に945米ドル、2012年にはなんと6075米ドルと、22年間で約18倍になりました。すでにタイの水準(2012年で5678米ドル)を超え、次はマレーシア(同1万0304米ドル)を目指して成長する段階です。

 これに伴い、GDP成長の牽引役は、“世界の工場”としての「輸出」から、中間層の爆発的増加による“世界の市場”としての「消費」に取って代わられようとしています。この変化は当然、流通・サービス業を中心とする日本企業にも多くの恩恵をもたらすでしょう。中国の消費市場は、干支がひとめぐりする次の辰年(2024年)を迎えるころまで、紆余曲折を経ながらも確実に成長していく見込みであり、その果実を見逃す手はないと考えます。(もちろん、中国ビジネスには、反日感情の高まりなどリスク因子も増えていますから、これに事業上どう対応していくかは、次回以降でご紹介していきます。)

消費市場は最大で8倍まで成長する

 では、中国の消費市場はどの程度まで成長するのでしょうか。

 私は、調整局面を何度も経ながら、の辰年(2024年)には現在の最大8倍(GDP成長率2倍×個人消費の拡大2倍×人民元の上昇効果2倍)にまで成長する可能性があると考えています。

 その理由を3つの要素に分解してお答えしましょう。