消去法的に考察すると、個人消費の活性化は1〜2年間でただちに結果が出ないとしても、10年以上をかけて相当な増加を図ることが政府方針です。実際、2013年3月に李克強国務院総理は、今後の中国経済の運営では個人消費(李克氏の中国語での表現は「内需的潜力(内需の潜在力)」)の増加を重視すると強調しており、中国政府が執念を持って結実を図る政策が失敗する確率は低いでしょう。次の辰年(2024年)までという長期で見通せば、個人消費のGDP比率を35%から日本並みの6割、アメリカ並みの7割という水準に到達した場合、GDP「2倍」の達成の可能性があります。
3. 人民元も2倍に上昇する
第3の要素は、人民元の上昇です。2005年7月21日に、1ドル=8.3人民元が8.1人民元に実質的に切り上げられ、2012年末までの最高値は1米ドル=6.267元まで人民元が上昇してきています。
2013年7月5日における最高値は2013年6月17日の6.1958人民元です。今後も人民元相場が漸進的で(ゆっくりと進み)、弾力的に上下動を繰り返しつつも、今後の経済成長を反映して長期にわたり上昇傾向を維持するものと予想されます。次の辰年(2024年)までには、1米ドル=3人民元台前半に突入する可能性も十分あると考えています。
特にそれまでの間に、日本と同様に過剰負債に苦悩するアメリカで顕著な財政危機が訪れる局面があれば、大量の米国債を保有する中国政府が強く抵抗しても、米ドルが世界的に売られる、すなわち米ドル安が進むこととの相対関係より、人民元高のシナリオが一気に進む可能性があります。これが現実となると、世界的には米ドルベースで語られる中国のGDPは、為替効果により、これも現状水準の「2倍」ということになります。
人民元の上昇「2倍」論に対して、次のような反論もあるでしょう。
「極端な人民元高を嫌う中国政府は、2005年の人民元の実質的切り上げ以来、自主的、コントロール可能、かつ漸進的という原則に基づき、弾力性を有する人民元為替レート制度を強化し、人民元の調整を行うことを標榜している。このため、今後も2倍という極端な人民元高を阻止するのではないか」。
確かに人民元の実質的切り上げが実行された当時、人民元には国際通貨性がなく、中国のローカル通貨にすぎませんでした。このため諸外国から批判されること、特にアメリカから為替操作国と認定されることに注意を払いながらも、当局がコントロールを働かせる余地が多分にありました。