ランコム、シュウ ウエムラ、イヴ・サンローランなどを展開する世界最大の化粧品会社、ロレアルグループ。日本を研究開発・製造の拠点として重視しており、投資を増やしている。なぜ、成熟市場と言われ、成長が期待しにくい日本市場を重視するのか。

クラウス・ファスベンダー/1963年7月生まれ、ドイツ・ハノーバー市出身。ハンブルグ大学経営学大学院を卒業後、クラフトフーヅなどを経て、1996年にロレアルドイツに入社。その後、ロレアル本社(パリ)やロレアル韓国社に勤務し2010年3月より現職。
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――来日して3年ですが、日本の化粧品市場の特徴をどうみていますか。

 日本はマーケット規模で言えば世界第2位、スキンケア分野では世界トップの大きな市場です。日本人は世界で最も洗練された美意識を持つ消費者であり、化粧品の専門的な知識を持っています。

 ただし非常に競争が激しい。商品のパフォーマンスが素晴らしく品質も高くなければ受け入れられず、商品開発の上で大変参考になります。また市場が成熟化しつつあり、市場全体の拡大は難しいでしょう。ブランド数も1000以上あります。

 この日本において、当社は数年間は成長し続けることができました。例えば、消費者が高齢化しているので、アンチエイジングの商品を提供することで消費者に興味を持ってもらえばいいのです。既存の技術に満足することなく、消費者に革新的な商品を提供し続けることで、確実に顧客の心を捉えることができました。

――どんな商品が売り上げ増加を支えたのですか。

 ランコムのジェニフィックシリーズや、ケラスターゼのヘアエイジングケア美容液「イニシャリスト」など、アンチエイジング商品が人気を集めました。特にイニシャリストは毛髪のハリと密度感を80%の人が感じた商品です。技術的に革新性があり、適切な価格の商品を発売すれば、日本市場においても売り上げを伸ばす余地はあります。

――そこまで日本市場を重視しているのはなぜですか。

 ロレアルは今後10年で10億人の顧客を獲得する世界戦略を掲げています。その実現のために不可欠であるアジア市場の拡大に向け、日本をアジアの研究開発の中核拠点として強化していきます。神奈川県川崎市のリサーチ&イノベーション(R&I)センターでは、この10年間で投資額、研究員をそれぞれ倍増させました。現在は220人の研究員がおり、今後もアジアの研究開発の中核拠点として機能・規模を拡張していきます。日本には優れた原料や技術が豊富にあり、研究開発にはもってこいの場所です。また日本のR&Iセンターは、基礎研究から商品開発、機能評価まで、すべての研究段階を備えている、アジアで唯一の拠点です。今後も投資を増やし、美白やアンチエイジングなどの革新的な多機能製品を開発していきます。