◆【マックス・ウェーバーの教え】部下と「友達」になる必要はない、組織を救う“大人の共感術”
部下が動かない、Z世代との距離感がつかめない……そんな悩みを解決するのが、ソフトバンクで「汐留の母」と呼ばれた澤田清恵著『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)だ。生身のリーダーに求められる最強の武器は生成AIには代替できない「コミュ力(共感力)」。単なる同情ではなく、相手の視点を論理的に理解する「認知的共感」の技術を体系化した、悩める上司たちの「読むサプリ」だ。呼吸を合わせる基本から、自身の無意識を言語化する応用、さらには「飲み会の失敗事例」や「エース部下の退職」といった実例に基づく「しくじり」分析まで網羅。表面的なテクニックではなく、心・技・体を整え、信頼で組織を動かすための実践的ノウハウが詰まった決定版!
※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
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相互理解の鍵を握る「思考のステップ」
「自分」を捨てずに相手を知る技術
共感力を育むうえで土台となる考え方をお伝えしましょう。まずは「チャンクアップ(抽象度を上げる)」という考え方です。
「シーザー(カエサル)を理解するのに、シーザーになる必要はない」というのは、20世紀初頭の社会学者マックス・ウェーバーの有名な言葉です。共感とは異なる文脈で語られた言葉ではありますが、多様な価値観を持つ人を理解するうえで重要な指摘です。
価値観の壁を越えるためのアプローチ
想像力を広げる「高い視座」の持ち方
つまり、自分の属性や価値観を変える必要はなく、相手の立場を踏まえたうえで、親身になることが大切なのです。そこで重要になるのが、「抽象度を上げる」という考え方です。
しかし、抽象度を上げる─といっても、少しわかりにくいかもしれませんね。簡単にいえば、「視点を高くする」ということです。
【解説】対立を解消する「目的への昇華」
「抽象度を上げる」というスキルは、多様なバックグラウンドを持つ部下を束ねるマネジメント層にとって、極めて実利的な武器となります。現場で起こる対立の多くは、実は「具体的な手法(やり方)」のレベルで起きているからです。
現場のマネジメントでは、しばしば「具体」の正解を巡って意見が衝突します。例えば、あるプロジェクトにおいて「スピードを重視すべきだ」という意見と「品質を徹底すべきだ」という意見が対立したとしましょう。
これをそのまま放置すれば平行線ですが、一段階チャンクアップ(抽象度を上げる)して「このプロジェクトが顧客に届けるべき真の価値は何か?」という問いに変えると、両者は「顧客満足」という共通の目的に向かうためのパートナーに変わります。
具体のレベルで争うのではなく、視座を高くして「共通の目的」を見出すこと。これこそが、価値観の異なるチームを一つにまとめる共感の第一歩です。
「同一化」ではなく「構造理解」を目指す
ウェーバーの言葉が示す通り、部下と全く同じ価値観を持つ必要はありません。例えば、若手社員の独特な感性やキャリア観が理解できないとき、無理に彼らと同じ視点に立とうとして疲弊してはいませんか。
大切なのは、相手と「同じ」になることではなく、相手が大切にしているものを「より高い概念」で捉え直すことです。彼らが求める「柔軟な働き方」を「生産性の向上」や「持続可能な組織づくり」というビジネスの文脈で構造的に理解すれば、自分の価値観を曲げることなく、親身な対話が可能になります。
問いのレベルを上げ、多様性を力に変える
部下の言動に違和感を覚えたとき、「なぜそんなことをするのか」と具体を問い詰めると、相手は否定されたと感じて心を閉ざしてしまいます。
そこで一呼吸置き、「その行動が実現しようとしている上位の価値は何か?」と視点を高くして問い直してみてください。個人のわがままに見えた提案が、実は組織の隠れた課題を解決するヒントに満ちていることに気づくはずです。この「視座の転換」を習慣化することで、マネジメントの悩みは「対立の解消」から「多様性を活かした価値創造」へと進化していくでしょう。
※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。









