音楽ファンドの世界的先駆け、ミュージックセキュリティーズ
起業のヒントは「IT×音楽×金融」の相性に
――こうして2011年4月に始まったとのことですが、ファンドが比較的早く立ち上がったのも、これまでの実績と知見があったからだと思います。とはいえ、2000年に創業された御社は、もとは音楽ファンドの運営からスタートしたと伺いました。
小松 はい。社名の「ミュージックセキュリティーズ」にもある通り、ミュージシャンが好きな音楽を創り、それにファンが投資する「音楽ファンド」の会社です。ファンドは1口1万円程度で、インターネットを通じて申し込みます。CDの売上に応じた分配金や、CDジャケットに名前が載るなどの特典もあります。
――そのアイデアはどこから?
小松 学生時代、投資信託会社でアルバイトをしていまして。あるファンドマネージャーのサポートをしていたのですが、そのなかで、ITと音楽と金融の相性がいいと気づいたんです。
――そもそも、小松社長も音楽活動をされていたとか。
小松 ええ。学生時代まで、ドラムを少々。作曲も少しやっていました。
――映画には、複数の企業が制作費を出し合う「製作委員会」のような仕組みがあります。当時、音楽の世界にこのような仕組みはあったのですか。
小松 多分、ないですね。1997年にデビット・ボウイが、著作権を債券化する「デビット・ボウイ・ボンド(ボウイ債)」を発行したというニュースはありましたが、成功したのかは……いまも知りません。あえて兆候を挙げるなら、2000年の証券取引法の改正ですかね。
――マネックスさんなど、ネット証券会社が立ち上がった頃ですね。
小松 売買手数料が自由化され、インターネット上で金融商品を取引するインフラが整いました。
――これで、音楽ファンドもいける、と思われたのですか?
小松 いや、そういうわけではないです。結局は直感です。もともと音楽をやっていて、就職先も決めないまま大学を卒業しました。ビジネスのアイデアを形にしたのが、卒業のわずか8ヵ月後で……厳密な戦略なんてありませんでした。でも自分がやろうとしていることに、「意味」はあると思っていました。
次回は、小松氏の原点である「音楽ファンド」立ち上げ当初の「想い」から、事業者を応援するためのプラットフォーム「セキュリテ」を開始するきっかけとなった「ある酒蔵との出会い」をお聞きします。「事業者と一緒に勝負する」という姿勢を大事にする小松氏が考える、ファンドの役割とは?(9月11日更新予定)