後継者、マーヴィン・バウワーの登場

 1937年にジェームズ・マッキンゼーが48歳で肺炎により亡くなると、マッキンゼー・アンド・カンパニーは1933年に入社していたマーヴィン・バウワーに引き継がれることになる。

 ジェームズ・マッキンゼーが会計のキャリアを持っていたのに対して、バウワーは法律関係のキャリアを積んだ人物だった。1903年にオハイオ州シンシナティで生まれたバウワーは、ブラウン大学で経済学と心理学の学位を取得したあと、1925年にはハーバード・ロースクールに入学しクリーブランドに事務所をかまえる一流法律事務所「ジョーンズ・デイ法律事務所」に就職している。

 しかし、若きバウワーにとって法律文書の作成が主な業務である法律事務所での仕事は退屈に感じられた。自分の好きなように仕事をさせてくれる職場で働きたいと願ったバウワーは、ハーバード・ビジネススクールの教授を通してたまたま知り合ったジェームズ・マッキンゼーと意気投合し、1933年にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社していた。

 ジェームズ・マッキンゼーの後継者となったマーヴィン・バウワーの夢は、コンサルタントを、医者や弁護士、牧師といった専門職と同じように人々から敬意を払われるような立派な職業に変えることだった。当時、コンサルタントという職業は「いかがわしいもの」として見られる傾向があった。

「(コンサルタントは)医者や聖職者と同じではないが、(中略)独特のやり方でクライアントに奉仕するために存在する」というのが、バウワーが生涯を通じて守り抜いた哲学だった。この哲学に則って、バウワーはコンサルタントがクライアントから全幅の信頼を得るにふさわしい「用語」「服装」「ふるまい」「容姿」に関する基準、現在にいたる「マッキンゼー・ウェイ」を詳細に定め、社員に守らせた。

 バウワーは、1967年に64歳で引退したが、2003年に99歳で亡くなるまで、長年にわたりマッキンゼーの魂であり、精神的支柱でありつづけた。

次回の掲載は9月19日です。引き続き9月20日刊行予定のダフ・マクドナルド著『マッキンゼー――世界の経済・政治・軍事を動かす巨大コンサルティング・ファームの秘密』から要約(マッキンゼーはいかにしてコンサル業界の覇者となったか)をお届けします。


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