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インキュベーションの虚と実

事業のHOWが鍵、そのパズルを考え抜く
小澤隆生・YJキャピタルCOOインタビュー

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第35回】 2013年9月17日
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 当たり前だが、投資する主語が変わると方針から何から異なる。ヤフーというインターネットの巨大企業の視点から、自ずと投資戦略は規定される。ずば抜けた存在であること、そしてヤフーとの組み合わせに意味があることが、求められる。このあたりは、小澤氏の明快さでもある。

 小澤流からは、二つの示唆が得られる。

 一つは、筆者の古巣のGeneral Atlanticなど一部の米国ベンチャーキャピタリストがやってきた、テーマを起業家に提示して事業を起ち上げる手法が日本でも有効なことだ。しかし、いま日本ではテーマ提示型で起業させるメンターは少ない。こういったメンターがもっと欲しいところだ。

 もっとも、このインタビューで分かるように、事業テーマを生み出すのは相応の努力や工夫が求められる。起業家にとっても、小澤氏の話は刺激になるだろう。本連載第5回でも指摘したが、事業アイデアをぱっと思いついた段階では、それ自体に価値がないことが多く、ビジネス機会として捉えられるようテーマを練り上げることが求められる。

 もう一つは、テーマを任せる人材だ。米国だと、既にベンチャーを成功させた起業家や実績のあるエース級のマネジャーなど、みるからにスゴイ人材にテーマを示して説得することが通例だ。しかし、小澤氏は「困っている人」など、優秀だがスゴくはない人に起業させ、自分も頑張って育成した。

 日本には優秀な人材はいるが、なぜこのテーマなのかと首をかしげることが多く、起業やベンチャーの経験が不足していることが多い。小澤氏の例は、この2点をメンターとの組み合わせで乗り越えることができることを示している。したがって、エコシステム(生態系)として、起業家とメンターの役割分担であり共同作業がいま以上にできれば、起業の成功が増えるのではなかろうか。

 もっとも、小澤流が全てだと言う気はない。様々なタイプのメンターが実際にいて、小澤流とは異なる育成方法のメンター/投資家がベンチャーの成功を生んでいる例もある。試行錯誤や実験を経て、いろいろなアプローチが開発されてこそ、日本が起業大国となる道が開かれるだろう。

 また、こうした方法論とともに、小澤氏が実際にやってきたことは、徹底的にやることの大切さをあらためて我々に示している。無難なやり方やガンバレと応援するだけでは、ベンチャーの育成にはならない。支援者側も“起業家的”な姿勢で取り組みたい。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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