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ドナルド・トランプ米大統領の次男、エリック氏。彼が日本のメタプラネットを熱心に応援する裏には、極めて有利な条件で株式を受け取れる経済的な動機があった。本来なら他の株主に不公平なえこひいきは許されないが、メタプラネットでは「第三者算定機関」が免罪符を与えたことで異例ともいえる利益供与が敢行された。特集『錬金術 暗号資産バブルの真実』の#6で、その錬金術のカラクリを解明する。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
株主総会なしで有利発行か
「第三者算定機関」が免罪符
メタプラネットがビットコインを大量に買う財務戦略で注目され、大株主のEVO FUND(エボファンド)が株式を売却して巨額の利益を手にする。そのスキームの詳細を、本特集で報じてきた(『メタプラネット株下落の裏で100億円を荒稼ぎ!ロックアップ条項で企業を束縛する「謎の錬金術師」エボファンドの正体』参照)。実質元手ゼロで100億円近い利益を上げた錬金術は、一般投資家の犠牲の上に成り立っている。
一般投資家がメタプラネットに熱狂した理由の一つに、あのドナルド・トランプ米大統領の次男、エリック・トランプ氏が「広告塔」となったことが挙げられる。エリック氏は今年3月にメタプラネットの「ストラテジック・ボード・オブ・アドバイザーズ」に就任し、9月に開かれたメタプラネットの株主総会にも出席。株主を前にメタプラネットを持ち上げてみせた。
なぜエリック氏は日本のメタプラネットを熱心に応援するのか。理由は簡単だ。メタプラネットから極めて有利な条件のストックオプション(株式購入権)を得ているからである。
メタプラネットは5月、エリック氏に3万3000個のストックオプションを発行している。このストックオプションの発行価格は1個255円で、行使すればメタプラネット株100株を、単価105円で取得できるというものだ。行使可能期間は来年4月から2036年3月までとされる。
ストックオプション割り当てを決議した前日、メタプラネット株の終値は510円である。仮に510円で売却できれば、ストックオプションを購入した約841万円(255円×3万3000個)の初期投資で、13.3億円の売却益を得られる。エリック氏はそうした投資機会を26年から10年間持ち続けられるのだ。エリック氏がメタプラネット株主をあおるのは、そうした経済的動機があるからだろう。
トランプ大統領の一族は、「トランプコイン」などの発行で既に巨額の利益を上げている。9月にはホワイトハウスの会見で、暗号資産を駆使した資産形成を追及したオーストラリア人記者とトランプ大統領が激しい応酬を繰り広げた。メタプラネットへのエリック氏の関与は、トランプ一族による世界を股に掛けた「錬金術」の一端とみることができる。
問題は、メタプラネットが発行したストックオプションが、少ない元手で簡単に大もうけできる極めて有利な条件であることだ。特定の株主に対して有利な条件で株式を割り当てることを有利発行といい、経営陣が独断で有利発行を行う場合、一般株主の利益を害する善管注意義務違反となる恐れがある。そうならないために経営陣は臨時株主総会を開き、株主の承認を得なければならない。
ところがメタプラネットは、エリック氏への有利発行に該当しないとして臨時総会なしでストックオプションを発行した。
その根拠となったのが「第三者算定機関」によるストックオプションの鑑定評価である。メタプラネットはストックオプションの発行価格の算定を評価会社に依頼し、1個当たり255円が「妥当な金額」であるとの評価を得ているのだ。
しかし、そこには株価算定を正当化する巧妙なカラクリがある。
それは何か。次ページで明らかにする。







