開沼 「ありがちな記事」「今までさんざん繰り返されてきたような不安煽り、権力糾弾型の記事」が出てこなかったのは、参加者がつまらないもの、わかりきったものを書けない空気を作ったからでしょう。一方、震災から2年経った現在、放射能、原発問題を語ることがハードル高くなりすぎているのかなとも思う。記事として扱うことのリスクが高くなり、福島の問題全体が語りにくなってしまっているのかもしれない。

パチンコ屋で見た
削られた車庫証明の車

開沼仮設住宅のオヤジの記事を書いた記者は、最初はギャンブルの話と被災者が結びつけられて語られることを深堀りしたいと話していました。記者がパチンコ屋に行って(原発事故で立ち入りが制限されている)双葉地方の車をチェックしようとしていたが、実証できるところまでたどり着かなかった。数字で探りきれないものが世の中にはたくさんあって「ふわっと」捉えきれない。

ふじしろ・ひろゆき
ジャーナリスト。広島大学卒。徳島新聞社で記者として、司法・警察、地方自治などを取材。NTTレゾナント(goo)でニュースデスクや研究開発支援担当を経て、2013年4月から法政大学社会学部准教授、関西大学総合情報学部特任教授。教育、研究活動を行う傍らジャーナリスト活動を行う。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)代表運営委員。2004年からブログ「ガ島通信」を執筆している。

藤代 義援金や補助金をパチンコにつぎ込んでいる被災者がいるという批判は本当なのかという問題意識でしたね。パチンコ屋の駐車場にある車の車庫証明が削られているというファクトから「どの地域の車か知られたくないからではないか」という仮説は興味深かったのですが、データとして十分に集まらず残念でした。ただ、パチンコに張り込んで聞くという作業は時間があればできた。キャンプは3日間で、参加者からは「短すぎる」という批判もあったのですが……。

開沼 「ちょっと来た人が書いちゃだめ」という話になると、誰も福島を語れなくなる。5時間で本質を掴める人も、5年かかっても掴めない人もいると思う。まずは来て、現場で見聞きすることが重要で、その時、自分が事前に用意してきた「物語」を証明するためだけの取材になっていないか、確認することが必要です。

藤代 ジャーナリストは限られた時間の中で誠実に向かい合って書くしかない。時間の有限性に気付けばもっと集中した取材ができると思います。