転職活動の目的は、「これまでの経験を活かしてステップアップすること」だとすれば、同業他社に転職するのは当然だと考える人がいます。一方で、そんな転職は掟破りだ、少々古いですが「訴えてやる」と考える会社も少なくありません。過激な言葉をつかえば、同業他社による「引き抜き」であると同時に、これまでいた会社への「裏切り行為」だからです。こうした転職は景気が回復する時期に増えます。つまり、まさに今がそのタイミングなのです。
では、あなたの職場に同業他社から「元ライバル」が入社してきたらどう思いますか?今回は、転職市場の活性化が進む今のような時期に起きがちな、既存社員とライバル会社出身の中途社員のギャップについて考えてみたいと思います。
アベノミクス効果で業績回復!
同業他社から「引き抜き」採用も
「おいおい、聞いたか。今度、うちの部署に入社してくるAさんって、ライバルのG社から引き抜かれたらしいぞ」
ここ最近、業績が上向きになり、クライアントからの発注が劇的に増加しているこの会社。昨年までは複数の広告会社で広告やキャンペーンの扱いをめぐって行われるコンペの数さえ激減していました。そのため、営業はやることもなく、
「そのうちリストラされるのではないか?」
と戦々恐々の状態でした。しかし今は、メディアの広告枠が満稿(出稿したくても一杯)の状態で、断ることさえあります。それでも「何とかしてくれ」と媒体各社への交渉を頼まれて、社内は大忙しです。ついには、
「残業ができない今、対応が限界です。何とかしてください」
と、人手を増やしてくれるように職場からは悲鳴も上がっています。以前と違い、深夜残業に対して人事がうるさい時代。仕事を処理する物理的人員が必要となります。そこで、しつこいくらいに上司と人事に人員増をかけあっていたら、中途採用で元ライバル会社の社員が入社してくるとのこと。まさに、「昨日の敵が今日の友」となるため、社内は大騒ぎです。
そんな職場に勤務しているのは、中堅広告代理店F社の営業職Kさん(28歳)。長引く広告不況で、職場に後輩社員はゼロ。それゆえ、閉塞感を覚える毎日を過ごしてきました。ところが、アベノミクス効果で業績が急激に回復。そして、東京オリンピック開催決定で、ますます仕事は増えそうです。しかし、いまさら新卒で人材を採用しても間に合わない状態。さらに、異業種から中途採用して育成する時間なんてありません。そこで、いつもコンペで激突していた同業他社から若手社員が入社してくることになったのです。